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夏ですね、暑いですね。
そういう感じのin奥州です。



 その日も佐助は『思い立ったが吉日』を実行する主の保護者……もとい同行人として、奥州の独眼竜が住まう屋敷の目の前まで来ていた。
 自分は慣れてしまったから良いけれど、こう何度も何度も訪れられて伊達家の方は迷惑していないだろうか。屋敷の門の閉ざされた扉を見ながらそんな心配を抱き、息を吐く。何だかその内、竜の右目くらいに出会い頭に切りつけられてしまいそうな気がする。もちろんそれは自分では無く、隣でそわそわと落ち着かない挙動を見せている幸村の方。
 出来ればそんな事で主君を失いたくないけれども、だからといって怒れる竜の右目の前に立つことも遠慮したい。ということで、佐助が目指すのは事態の回避である。
 ではこの状況は何なのだという話になるが、それは、まだどうにか逆鱗には触れないだろうという判断の元、自分が幸村の奥州行きを問題なしと結論付けたからだ。
「っていうか、承諾したら直ぐに出立とか無いよねぇ……」
「佐助、何を一人でぶつぶつと言っておるのだ?」
「大した事じゃないから聞き流してちょーだい。んで旦那」
「何だ?」
「あそこで膝抱えて落ち込んでるのってさ、俺様の見間違いじゃなかったらあれだよね。どっかの西海の鬼さんだよね」
 二人がいる場所からやや離れたところで地べたに座り込んで膝に顔をうずめている、どこかで見たような服を着た、どこかで見た様な髪の色や髪形をした、どこかで見た様な戦国武将を指さして尋ねると、主君は酷く驚いたような表情を浮かべた。
「む、これは長曾我部殿!?何故このような所で沈んでおられるのか!?」
「あ……旦那、気付いてなかったんだね」
「うむ。あれほどまでに分かりやすく沈んでいると言うのに……何故であろうか」
「一つの事に集中し過ぎる癖を直す努力でもしてみたら?」
 首を傾げる幸村にそう言ったところで、ぎぃ、と門が開く音が響く。
 見れば確かに門は開いていて、そこにいたのは当然ながら竜の右目。
「……よぉ、真田の。忍の」
「お久しぶりー、って言っても一週間くらいしか間空いてないけどね」
「片倉殿!某、政宗殿にお会いしに参ったのでござる!」
「あぁ、その件だがな」
 無駄な程に元気まみれな幸村の言葉にさも嬉しそうに笑顔を作って見せて、片倉小十郎はとても楽しげに口を開いた。
「政宗さまは今、お前にゃ会いたくないって言ってたぜ」
 ……その言葉に門の傍で沈む戦国武将が二人に増えた事は言うまでもないだろう。







小十郎は、政宗が追い返せって言っているので心おきなく追い返せるのがご満悦なのです。
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