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暑いですね。冷房って大切ですよね。そんなお話。
「何って言うかさ……お前ら、毎年来るよな、うちに」
「……仕方ねぇだろうがぁ」
扇風機の前で「あ゛ー」とか言っていた鮫は、鬱陶しそうに長くなった前髪を掻き揚げて、それからディーノの方を見た。
「言っとくが、俺は何にも悪くねぇ」
「え、でも今回はスクアーロがへましたからだって聞いたけど」
「誰だンな嘘吐いた奴!」
「えっと……ベルフェゴール?」
「テメェかベルぅ!」
「は?嘘とかワケ分かんない」
クーラーの良く聞いた室内の中、三人がけソファー一個を一人で占領して携帯ゲームに勤しんでいた王子様は不機嫌そうに声を上げた。
「全部スクアーロが悪いんじゃん。俺が投げたナイフ捌ききれなかっただろ」
「あ゛ぁそうかよ。全部捌かれたいんならもっと狭い範囲に投げやがれ!」
「何言ってんの?別に全部捌かれたいとかじゃないし。っていうか王子のナイフ捌くとかマジありえないし。不敬罪で私刑じゃね?」
「……ベル、とりあえずその理不尽さ丸出しのセリフは止めた方が良いんじゃないかな」
鮫の頭の上で後ろ髪の方を一生懸命まとめるような動作をしていた赤ん坊が、呆れたように息を零す。
「それに、捌かないのが悪いとか言って、捌いたら私刑ってどうなんだろうね。私刑も私刑でちょっとマズイ気がするし。せめて死刑にした方が良いんじゃない?」
「どっちだって同じじゃねぇかぁ……?」
「いや、死刑の方がひでーと思う」
「跳ね馬ぁ、お前、ベルの理不尽さを知らねぇからンな事言えんだろ」
「へ?」
「ベルの死刑も私刑もどっちにしたってサボテンの刑だよ」
「……えぇとつまり?」
「リアル黒ひげ危機一髪だぁ。ただしナイフを刺すのは樽じゃなくて人間だけどな」
「……うわ」
「ちょっとそこの驢馬。何引いちゃった顔してんの?王子に向かってそんな表情して良いと思ってんの?」
「いや、驢馬じゃなくて跳ね馬……」
「こいつもう馬じゃなくても良いんじゃねぇ?いっそネズミとか」
「それよりもモグラとかどうかな」
「ナマケモノはー?」
「……泣くよ?」
「……テメェら」
と。
ばき、と何かが折れる音と共に、地の底から這い上がってくるような低い低い、怒気の籠った声が部屋の中に響く。
それが誰の声かなど、この部屋にいるメンバーを見れば分かろうものだった。
この部屋の元々の主から一番上等な机と椅子を奪い取っていた、かの集団の暴君は苛立ちを隠そうともせず、騒ぎの中心にいた四人を静かに見据えた。ただ、静か、といってもそれは大人しいとか落ち着いた、とかいう言葉と繋げられるわけではない。彼の瞳には静かな怒りが満ち満ちている。
……正直、死ぬかなぁ、とか思った。
頬を流れ落ちる冷や汗と、一斉に静かになった他三名とを認識するディーノの耳に、耳をふさぎたいほどに恐ろしい彼の言葉が届く。
「少しくらい黙れねぇのか?」
短く、淡々とした言葉。
一見すると答えを求めているかのような言葉だったが、一人として、答えようとはしなかった。何故かと言えば簡単な話で、応じた時点で確実にその怒りの標的にされてしまうからである。
同様の理由から、身動きすらままならない。死にたくないのならば、石のようになっていなければならなかった。指先をピクリと動かすだけでも、今の彼ならば容赦なく標的とみなして銃弾を撃ち込むだろう。……ぞっとする話だった。
とてつもない緊張の中に突き落とされている四人を前に、彼は苛々とした様子で四人から視線を外して新しい万年筆に手を伸ばした。仕事の続きを行うらしい。
その事に酷く安堵しながら、どうやら怒りは(今のところは)収まった様だと、こそりと鮫に耳打ちをした。
「……もう、今日は黙っとこうぜ…」
「……あ゛ぁ」
「……王子もさんせー」
「……こんなところで死ぬのはやだしね」
鮫は頷き、同じく囁きを拾い上げたらしい王子と赤子も同意を示し、四人は大人しさをもった静かさを纏い、とりあえず暴君を刺激しない事を誓った。
暗殺部隊の日常を考えてみたら、なんていうか、やっぱり毎年冷房器具が壊れてるんじゃないだろうかなぁとか思って見たりします。
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