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大作戦です。今回は序章みたいなもんです。



「あ、おかえり」
「あぁ……何だ?この臭いは」
 帰ってくるなり漂ってきた香りに眉を寄せながらもリビングに足を踏み入れると、あぁ、とキッチンの方から声が返って来た。
「クッキー焼いてんの。食う?」
「いや、いい。……しかしこんな時間にどうしてまた、そんなものを作っているんだ?」
 デスサイズがこう言う物を作る事はしばしばある。暇つぶしだったり気分だったり、その理由は様々であるが、それも殆ど時間が有り余っている休日の話。今日の様な学校のある平日の、帰宅後の時間に菓子なんてものを焼いている姿など同居している自分でも滅多に見ない。それは、他の同居人も同じだろう。
 だから何故なのかと首を傾げると、何でも無いようにいつも通りの声が届けられた。
「依頼だよ依頼。作って欲しい物があるってさ」
 そして、その声と共にキッチンから出てきた彼の、その両手の上にある皿を見て、ウイングは目を細めた。
 大きめの皿だ。それは良い。だが、その上に乗っているクッキーの山はどう説明されたら納得出来るのだろう。依頼、と言われたが……こんなに必要になるとは一体何の依頼だ。パーティか何かなのか。
 そんな自分の不審を感じ取ったのか、大皿をテーブルに置きながらデスサイズは苦笑を浮かべた。
「いやさぁ、依頼通りに作れてるか実験しないといけないわけなんだよな」
「実験?」
 嫌な響きを伴う言葉に嫌な予感を覚え、顔を引きつらせるウイングの肩に、ぽん、とデスサイズの手が乗る。
「ってわけで手伝ってくれ」
「……食わないと言っただろう」
「だめ」
 気が付けば肩に乗っている彼の手には、逃がさないと言わんばかりに力が籠っていた。
 本気で振りほどけば拘束から逃れることは可能だろう。だが、その後逃げ切る事は恐らく不可能だ。……生贄がいるならまだ、その誰かを身代わりにする事が可能なのだが。
 どうして他の三人はまだ帰らないのだと幸運な彼らを恨みつつ、ウイングは、もうどうとでもなれと……抵抗を止めた。
 




逃げ切ることが不可能なのは、デスさんの足が一番早いから。(リアルに機体性能、そんな感じっぽいです(ウィキ参照))
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