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樹海、ほとんど関係ないんですけれども。クーデター前のザン様と子鮫です。



075:純白の樹海
 
 
 
「おぉぉぉぉ!すげぇ!なぁ、見ろよ御曹司!」
「煩ぇ黙れ口を開けんなあと呼吸も止めろ」」
 無邪気に叫ぶ子鮫の傍で耳を塞ぎながらも答え、冷気が次々と流れ込んで来る原因となっている元は窓だった窓枠に視線をやった。
 どうして窓だったものが窓枠に格下げられているかといえば、それは当然、流れ行く外の風景を見て騒いでいる馬鹿のせいだ。この馬鹿はあろうことか、この白銀の世界で窓を開いて身を乗り出すという愚行を侵しているのである。
 このまま車外に突き落としてやろうかと真剣に考えるのもこれで九回目かと思いながら、十回も思わせる様なら本気で落とそうと心に決める。その時にはもしかしたら窓から突き落とす、などという生ぬるい行為では無くて、ドアごと外に吹き飛ばす、という報復を行ってしまうかもしれないが、その時はその時だ。車の一つ二つ壊した所で自分を責められる人間などそうそうといるわけもないし、この鮫もそんな事で死ぬような弱者ではないだろうから問題は無い。
 そんな風に思いながら、先の自分の言葉に文句をつけられる前にその機会を消してしまおうと、ザンザスは未だ窓枠にはなっていない自分側の窓に視線をやって口を開いた。
「初めてか」
「……何がだぁ?」
「この景色を見るのがだ」
「初めて……じゃねぇなぁ」
「……だったらどうしてそこまで騒げるんだテメェは」
 呆れを抱き息を吐くと、スクアーロは何でも無いようにさらりと返してきた。
「だって、アンタと一緒に見るのは初めてだろぉが」
「その程度の違いで騒げるのか」
「……仕方ねぇだろ」
 意図的に馬鹿にするように言ってやったのに、予想と反して、返ってきたのは怒鳴り声では無く苦笑にも似た何か。
 ちらりと視線を子鮫に戻すと、彼今度は彼が視線を逸らしていた。
 そしてそのまま彼は言う。
「アンタ以外だったらこんな風にはならねぇよ」
「……フン」
 その言葉に対して返す言葉などあるわけもなく、軽く鼻を鳴らして子鮫越しに外を窺う。
 そして見えた白に覆われた森は、かつて無い程に銀に輝いていた。







車に乗って移動中。多分行先は、暗殺対象が住んでる場所とかです。
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