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ハロウィン・リボーン(ヴァリアー)編です。
多分現代かと思われ。



 

 何で、今日という日が休暇になってしまったのだろう。
 カレンダーの日付を眺めながら、スクアーロは小さく息を吐いた。
 最近忙しかったから、少しくらいは休みたいと思っていたのは事実だ。そんな気持ちを、上司に零したこともあった……その後すぐに空のグラスを投げられたけども。
 しかし、だからといって今日という日が休みになればいいと思った事は一度もない。
 そしてそれを、ザンザスだって知っていると思うのだが……よりにもよってこの日を休暇にしてくるとは。もしかしなくても嫌がらせなのだろうか、これは。
 あの上司だし、有り得ない話ではない。いや、有り得ない話だとかいう事ではなく、むしろ、そうでしかないのではなかろうか。そんな風に思いつつ、二度目のため息を吐きながら自室のベッドにごろりと寝ころぶ。
 さて、今日はどうしようか。事態に巻き込まれないには一日中ヴァリアー本部の外に出ておくことが必要なのだが、今晩は明日の任務のための準備等があるため帰って来なければなら来ない。そして、どんなに夜遅くであろうと、日付が変わっていない時に本部にいたとしたら、事態に巻き込まれる事は殆ど間違いないのだった。
 逃げても無駄なのだという事実に若干の憂鬱さを覚えながら、『問題の事態』というものが自分の所に飛び込んで来るまでは眠っていても良いだろうと、ごろ、と寝返りを打って目を閉じる。
 が。
「鮫ー!trick or treat!だから菓子よこせ!」
「僕はお菓子は要らないからお金頂戴」
「……」
 どうやら、眠る時間は与えられなかったらしい。
 何でこいつらはこういう時ほど悪いタイミングでやってくるのだろうかと三度目のため息を吐いて……何と言うか、彼らのために瞼を開けるのも体を動かすのも面倒な気分だったので、口だけを動かして彼らに応じる。
「タンスの左の下から三番目の引き出し」
「つまり左の一番上の引き出しだね」
「ふつーに言えっての。……ってゆーかスクの部屋殺風景過ぎね?タンスも小さいし、ベッドも小さいしさぁ」
「ベッドに関しては、君の所が大きすぎるんじゃないかな」
「あれくらい普通だろ」
 呆れ気味なマーモンの正論をバッサリと切り捨てたベルフェゴールの声と共に、引き出しを開ける音が部屋の中に響く。
 果たして、引き出しの中を見た二人はどんな反応をするだろうか。喜ぶ……とは思えない。絶対に文句を言って来るはずだ。ベルフェゴールは量が少ないと怒るだろうし、マーモンは現金じゃないと不満をあらわすだろう。
 が、用意してあっただけ、こちらとしては感謝して欲しいくらいなのである。故に、もっと、だとか、他の物を、とか言われたとしても黙殺しようと心に決める。
 しかし。
「用意しててくれたんだね、ありがとう。ほら、ベルも」
「まー、礼を言ってやらないでもないけど」
 背後から聞こえてきたその言葉に、思わずスクアーロは固まった。
 今……何が聞こえたのだろう?自分の耳が使いもにならなくなったわけではないのなら、彼らは、自分が用意した者に対しての礼……というものを口にしはしなかっただろうか。
 ……有り得ない。去年もその前も、その前の前も、今回と同じくらいの量と今回と同じようなものを用意してきた。その度その度に少ないだの欲しいものと違うだのと文句を言われ、普通より十分多いだろ知るかと答え、ハロウィンは金を引き渡す日じゃねぇと答え、最終的にベルフェゴールがナイフ片手に自分に突っかかって来るという展開に陥ってきたはずなのに。
 それが、今年になってまさかこんな発言を耳にするとは。
 もしかして世界は明日にでも滅びるんじゃないだろうかと、そこまで思ったところで、ぷ、と小さく吹き出す音が聞こえた。
 それを訝しく思ってごろりと背をシーツに全面的に付けるように体を動かし、顔をタンスのある方に向ければ……見えるのは、肩を小刻みに震わせている来訪者たちの姿。
「あははっ……やっば、これ成功じゃね?」
「まさか僕もここまで嵌ってくれるとは思わなかったよ……くくっ」
「……あ゛ー……つまり、」
 二人の姿を見て、悟る。
 つまり、自分は、二人の悪戯に嵌ってしまったのだろう。
 舌打ちをしながら起き上るこちらに、笑う事を終えたマーモンがふよふよと寄ってきた。
「見事に固まってくれてありがと、スクアーロ。背中しか見えなかったけどあの言葉の効果、十分わかったよ」
「……菓子はやっただろうがぁ」
 だというのに悪戯をするとはどういうことだと四度目のため息を吐くと、赤子は楽しげに微笑んだ。
「あんなお菓子の量じゃ満足できないっていう王子様が、じゃあ、お菓子と悪戯両方やっちゃえば良いんじゃないかと思いついちゃったからね」
 彼の言う通りの量をあげない、対策を講じないスクアーロが悪いよ。
 そう言う赤子の頭に、スクアーロはとりあえず軽めの手刀を食らわせておいた。





そしてまだ爆笑かなにかしてるベルにはハイキックとか。
ちなみに菓子の量を増やさない理由は、増やしても増やしてもベルは満足してくれなさそうだから、初めから増やす事に意味を感じていないとか、そんな感じでもあったり。
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