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エンドレスループを書きたかっただけの話です。奥州主従です。
08:手を伸ばす
手を伸ばす。
背中に触れそうになる。
ぴくりと、指先が揺れる。
静かに、腕が落ちる。
先ほどから、ずっとその繰り返し。
はぁ、と息を吐いて、政宗は腕を組んだ。
背中を一回とん、と叩くだけの事が出来ない。
怒らせているわけではない。仕事を邪魔しに来たわけでもない。
それでも、どうしても触れるのに躊躇いを覚えてしまう。
何故なら。
「何で寝てんだ小十郎……」
自身の右目を名乗る男は、瞼を二つとも閉じてしまっていたのである。
夕餉の支度が整ったと言うから、小十郎を呼びに行く役を勝手に奪い取ってここまで来てみたら……見えたのは明らかに眠っていると分かる背中だなんて。
……こんな事になるなら始めから来なかった。
だって、起こせるわけがないのだ。ここのところ彼が精力的に働いていた事を一番知っているのは自分。だから、彼がとても疲れているのだととてもよく理解しているのも、自分なのだ。
どうしようかともう一度息を吐いて、手を伸ばす。
背中に触れそうになった手に、躊躇を覚えると同時に指先がぴくりと揺れる。
ほんの少しの躊躇いに腕が震えた後、腕は、静かに落ちる。
「またかよ……」
我ながら不甲斐ないと言うかなんというか。
がくりと肩を落として、小十郎の背中を見る。
未だ起きる気配を纏わないその背。
それを数秒見た後、政宗は再び手を伸ばした。
そしてまた躊躇って……っていう終わらないループのお話でした。
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