お題：向日葵 20．咲かない花

向日葵のお題、ついにラストです。途美的な超兵四人組。小学校くらい。
そして、季節違いも甚だしく、夏の休み中のお話です。

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20．咲かない花

 

 

 

　夏休み。

　それはある意味素晴らしい物かもしれないが、またある意味では、どうしようもなく救いようのない物だった。

　飴と鞭が同時にやってくるようなその期間を、故に自分はちょっとだけ苦手に思っている。宿題と言う名の鞭さえなければ大歓迎なのだけれども、現実はそううまくいかない。権利があれば義務がある、つまりはそういうことなのだろう。面倒だが。

　まぁ、そんな事を思ったところで夏休みはやってくる。

　そして、今年もやってきた。

　……というわけで、本日は八月初旬。

　一階のリビングにて、ハレルヤは食卓に夏休みの宿題を広げて『鞭』との戦いを繰り広げていた。目標は中旬までにすべての宿題を終わらせて、のんびりと快適に『飴』を味わう事。ちなみに、そのプラン最大の障害になりそうな自由研究は早々に終わらせている。内容はもちろん適当。毎年の事だから特に思う所は無い。

　そうして算数のドリルの残りページが一ケタになった頃。

　一度鉛筆を食卓の上に置いて、庭に面する窓の方を見た。

　大きめの透明な窓は、この時間帯なら外の風景を殆どありのまま見せてくれる。青い空も、白い入道雲も、庭向こうの道路を滑るように進んで行く自転車も、ちょっとだけの庭も、窓の下に置かれているプランターの上部分も……その傍にしゃがんで、じぃ、とそれを見つめているアレルヤとマリーの姿も、ありのままに見せてくれた。

　……いや、というか。

「何やってんだアイツら……」

　まだ午前中とはいえ、夏……しかも八月なのだから外は暑いだろう。だというのに帽子もかぶらず、日差しを気にする様子もなく、プランターを見つめていると言うのはどういうことだ。それで倒れたらどうするつもりなのだろうか。

　帽子だけでも持って行ってやるべきかと思いながら二人の様子を眺めていると、向かいの席に座っていたソーマが宿題を駆逐していたその手を止めた。

　彼女が首を傾げたのを視界の端にとらえつつ、ちょいちょい、と外の方を指さす。

　いつもは妙に反抗的な彼女も、どうやら今回は素直に顔をそちらに向けたらしい。直ぐに納得の気配が傍から漂ってきた。

「お前、アイツらが何であんな事になってんのか知ってるか？」

「いや……私は知らない。お前は知らないのか？」

「知ってたら訊かねぇよ」

「それもそうだな」

　頷いて、ソーマは腕を組んだ、ようだった。やはり視界の端だけで彼女を捉えているので、細かい動きが把握しにくい。もっとも、だとしても会話をするのに支障は無いから、これでも別に構わないのだが。

　そんな風にこちらが考えていると知った様子も無く、彼女は訝しげに呟いた。

「しかし……あれは朝顔のプランターか？」

「そういやんなもんもあったか……あー、朝顔観察日記でっちあげねぇと」

「まだやってなかったのか？私は終わったぞ」

「よし見せろ」

「断る。自分でやれ。あと、でっち上げは普通に駄目だ。アレルヤに言いつけるからな」

「……っち」

　軽く舌打ちをして、窓の外の二人から視線を外す。

　そして何やら苛立つ笑みを浮かべてこちらを向いているソーマを見て、こちらも笑う。もちろん、さわやかな物とはほど遠かったけれども。

「テメェ後で覚えてろよ」

「のぞむところだ。返り討ちにしてやる」

 

 

～その頃の外組～

 

「ねぇ、アレルヤ。何でこの花は咲いて無いのかしら？」

「何でだろ……朝は咲いてたよね？」

「咲いてたわ。一緒に見たもの、間違いないと思う」

「でも今は蕾なんだよね」

「不思議ね……」

「不思議だね……あ、そうだ！ハレルヤに訊いてみようよ」

「ハレルヤに？」

「だってハレルヤって、僕らの知らない事をたくさん知ってるし、この事も知ってるかも」

「確かにそうかも。……じゃあ、私はソーマに訊いてみる事にするわ」

「じゃあ、後で訊こうね」

「今は取り込み中みたいだし、邪魔したら悪いものね」

「うん。……それにしても咲かないね」

「咲かないわね……」

 

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お題のラストがこんなラストでいいのかなぁと思うのですけれど、ほのぼのラストほど素敵なものは無いと思うから、やっぱりこれでいいんだと思う事にいたします。