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何度も言うようですが、風邪ネタって本当に使いやすい…。
ちょっと昔に書いたお話を見つけたので、もったいないから上げてみることにいたします。
青天の霹靂というのは、実は案外直ぐ側に転がっていたりする物で。
実際、それはこちらに転がってきたのである。
全く、意外なこともあるものだと、体温計を取ってスクアーロはそこに示されてあった数字を無情に読み上げた。
「四十度一分」
「完全に風邪だね、それ」
「てなわけだぁ、当分部屋から出るんじゃねぇぞ、ベル」
「…うー」
そして今回の青天の霹靂の具現者と言えば、寝ておけと言うのに起きていて、頭を抱えて唸っていた。おおかた、頭が痛いとかそういう事だろう。だから、だったら本当に眠っておけと。そんな無茶をしても風邪が長引くだけで良いことはない。
しかし、何度言ってもこの王子と来たら。負けず嫌いは良いのだが、使い場所を間違っていると思う。自分だったら、直ぐにでも寝て……あぁ、負けず嫌いとは別の意味で無理だった。そんなことをしていたら良い的だ。何の的かはあえて言うまいが。
不機嫌そうなベルフェゴールの肩にポンと手を置いて、スクアーロの肩にいたマーモンは励ます気の無い様子で、励ましの言葉を紡いだ。
「少しの辛抱だから頑張って、ベル」
「…何その棒読み」
「棒読みとは失礼だよ。ちゃんと心を込めていっているのに」
「嘘付け。マーモンが何の見返りもなくそんなことするわけねーじゃん」
「まぁ、それはそうなんだけどね」
「お喋りは終わりかぁ?ならベルはとっとと眠れぇ。マーモンは見張っとけ」
「スクアーロは?」
ベッドの上に下ろしたマーモンに見上げられながら問われ、大したことではないと肩をすくめて席を立つ。
「食い物持ってきてやる。果物系で良いか?」
「食欲無いからいらね」
「ンな事言うんじゃねぇよ」
食べるものを食べなければ回復はしないだろうに。
呆れて言うと、前髪の隙間から鋭い視線が投げかけられた。
「何?お前スクのくせに俺に口答えするわけ?」
「それ以前の問題だろうがぁ……」
はぁ、とため息を吐いてベルフェゴールの額を小突く。
「った!?」
「やることやらねぇと、治るモンも治らねぇだろうが」
「…大丈夫だし。俺王子だし」
「関係ないよ、ベル。風邪引いちゃった次点で王子とか無意味だからね。それに声が小さい時点で違うって認めてるような物だし」
「マーモン、お前ナマイキ」
「君が意地っ張りなだけ…むぎゃ!?ちょ、何するんだよベル!フード引っ張らないでフード!慰謝料もらうよ!」
「知んねーよ!王子こそ慰謝料的なもん欲しいっつーの!」
「は!?何でそこで…」
バタン。
騒々さを部屋の中に閉じこめて、スクアーロはそのまま廊下を歩き出した。向かうのは厨房……のつもりだったのだが、先にザンザスに言ってきた方が良いだろうか、と思って執務室の方に変えた。最近は仕事が少なかったらさほど支障はないと思うけれども、それと報告義務は無関係だ。
だが、執務室に行くまでもなく。
直ぐに、廊下でザンザスとは鉢合わせた。
「お、ナイスタイミング」
「何がだ」
思わず思ったことをそのまま口に出すと、ちらりと向けられるだけの視線。どうやら今はそれほど機嫌が悪くないらしい。
それに対しては何も思うことはなく、手短に、言うべき事だけを言うことにした。言った後に果物を持って部屋に戻らなければならないのだし。急ぐことではないだろうが、あちらの方が優先順位としては上だろう。
「ちょっと伝えたい事があってなぁ…ベルが風邪で寝込んでる」
「ベルフェゴールが、か?」
「おう。嘘じゃねぇぜ?熱なら四十度あったしな。マーモンを今は見張りにおいてるぜぇ。……見に行くかぁ?」
「いや、いい。とっとと風邪を治せと言っておけ。任務が滞る」
「ん?最近なんか、アイツ引っ張り出すくらいの任務あったかぁ?」
「大したモンじゃねぇ。単なる護衛だが手が空いているのがヤツだっただけだ」
…護衛。
ベルフェゴールに護衛、させる気だったのか。
近頃、誰でも良いから殺したいとか言っているあの王子に。
いつもならば問題ないだろうと思うが、近頃の彼の様子を見るとそうも言っていられないような気がするのは自分だけだったのか。
「…ボスさん、そりゃ風邪様々じゃねぇのかぁ…?」
「…?何故だ?」
…多分、分からないのはこの相手と王子本人だけだろう。
ボスが分かってない理由は、最近のベルの様子を忙しくて見れてなかったからとかそういう話。
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