お題：紫陽花 14．ラストチャンス

何気にネーナの話を結構書いてるような気がするんですが……あれ、どうなんだろ。
まぁ、というわけでネーナさん独白的なものです。

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14．ラストチャンス

 

 

 

　まだ、駄目。

　まだ我慢していないといけない。まだこの気持ちを外に出してはいけない。出してしまったら全てが終わってしまう。全てが無駄になってしまう。全ての意味が無くなってしまう。この、四年間の積み重ねという名の今の自分が、いなくなってしまう。

　まだ、駄目だ。

　まだ、我慢していないと。

　一度出てしまえばその感情は収まらなくなる。今の自分が壊れる。今の自分が崩れる。今の自分が消える。今の自分が、なくなる。そして自分の中の中の中の中の中の中の、一番どす黒い部分が外に出てくる。そうしたら、きっと貴女は私を殺してしまうだろう。使えない子は嫌いだと、笑いもせずに、自分の手も汚さずに。

　教えたことが無いから知らないだろうけど、私は、そんな貴女が大嫌い。今すぐこの手にある銃を貴女の眉間に向けて引金をひいてしまいたいくらい。手を伸ばせば握れるナイフを貴女の喉元につきたててしまいたいくらい。今だって、衝動的にその辺りに転がっている何か重いものを持って貴方の所に向かいたい。そして、思いきりそれで貴女の頭を殴りつけてやりたい。鈍い音と鈍い感覚が、きっと私を喜ばせるだろう。

　でも、まだ、駄目だ。

　まだ、我慢していないと。

　一度出てしまえば、その感情は収まらなくなる。

　収まらなくなった感情は、そのまま外に出て行くしかない。私は、それを抑えようとは思えないはずだ。だって、私はそうすることでとてもとても苦しい思いをしているのだから。出来る事ならば、今すぐこの感情が指し示すままに行動したい。殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい、殺したい。貴女を、貴女を守ろうとする者を、貴女が大嫌いな世界を、貴女と……全然関係の無いあの男を。

　早く、この世界から消すことが出来れば良いのに。

　でも、まだ駄目だ。

　まだ、我慢していないと。

　一度出てしまえば、その感情は収まらなくなる。

　そうしたら。

　後は、狂気に呑まれて終わってしまうのだから。

 

　あの男を殺す前にそんな事になるのは嫌だ。

　だから最後の機会まで、私は狂気をとっておく。
 

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そしてあの男を殺せたなら。
（私は、狂ってしまっても良いの）