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奥州に押し掛けて行った瀬戸内組のお話です。



 何の連絡も無く、暇だからという理由だけで訪れたのがいけなかったのかもしれない。
 実際、自分たちを出迎えた竜の右目には物凄く嫌な顔をされた。政宗様がようやく政務を始めたところだったのに、とぼやいていたし、恐らく間も悪かったのだろう。
 だが。
「……れっつ……ぱーりぃ………………くー」
「……」
「……」
「ふむ」
 ……元親がそう思っていたのは、政務中であるはずの政宗が机に突っ伏して寝ている姿を見るまでだった。
 思わぬ事態に元親が唖然としていると、自分の隣にいた元就が小十郎の方を見た。
「竜の右目よ、あれのどこが政務中なのだ」
「……目を離すと直ぐこれか」
 呻いて、小十郎は渋い顔を作る。
 その言葉で、どうやら、自分たちが訪れるまでは彼もこの部屋にいたらしい事が判明した。そして、その間はまだ、政宗はきちんと政務をしていたのだろう。けれども彼が自分たちを迎えに行く事になってしまって、見張り役がいなくなってしまったから……気が抜けて眠ってしまったに違いない。
 まぁ、政務をしているよりは外で馬を走らせている方が似合う様な相手だからと、何となく現状を納得しながら苦笑する。自分だって部屋の中で机に向かっているよりも野郎どもと船で海に出る方が性に合っている側の人間だから、彼がこうなってしまっている気持ちはよく分かった。書類仕事なんて、つまらなくてつまらなくて仕方が無いのだろう。
 これは放っておいてやってもいいんじゃないかと、だから自分は思ってしまうのだが、 残念ながらそうは思わないのもいるわけで。
 どこからともなく油性のマジックペンを取り出した元就は、表情を動かす事無くそのキャップを取り去った。
「それにしても見事な程の熟睡っぷりよな。顔に何と記せば良かろうか」
「人の主君に落書きしようとするんじゃねぇ」
「つーか元就、何で油性マジックなんて持ってんだ」
 今は戦国時代じゃ無かっただろうか。
 呆れと共に入れたツッコミだったのだが、元就はそんな言葉を鼻で笑った。
「本田忠勝のような存在がおる世界で、そのような事を言われても困るのだがな」
「……そりゃあ……そうかもしんねーけど、」
「それに、未来でもそう簡単には作れそうにないカラクリでさえ、今、数多くあるのだ。今更油性マジックの一本や二本、あったところで誰も驚かぬだろうよ」
「まぁ、葱や牛蒡も武器になる世界だからな……」
「いや、それを武器に出来るのはきっとアンタだけだからな。俺だったら絶対に無理」
 何故かしみじみと呟きを零した小十郎にそう言ってから、予備動作なしで元就の持っていたマジックペンに手を伸ばした。もちろん、出来る限り最高の速度で。
 しかし、その動きは既に彼にとっては予測済みだったらしい。元就は素早くマジックペンごと元親の手と距離を取り、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「海賊ごときが我が私物を取れると思うたか。貴様の動きなど計算の内よ」
「……いや、それは良いんだけどよ」
「……?」
「お前、俺の手を避けるためとはいえ部屋の入り口から離れたら意味なくねぇ?」
「……む」
 言われてようやく気付いたらしい。
 部屋の中に踏み込むことなく自分の手から逃れた彼。となれば、彼が進んだ先は廊下であり、入口の前に立っていたのだから……そこから離れるとなると、どうしても彼自身、入口から離れる事になってしまうわけだ。
 そんな簡単な事に今頃気付くなんてらしくもない失態だと呆れながら、不満げな表情を浮かべる元就の手からひょいとマジックペンとキャップを奪い取る。今回は避けても無意味かと思ったらしく、抵抗らしい抵抗も無かった。楽でいい事である。
「……我とした事が何と言う失敗だ」
「ま、お前も人間だったって事だろ」
「仕方あるまい……こうなれば馬鹿鬼を打ち滅ぼすことで汚名を返上しようぞ」
「……そして何でそうなるんだテメェは」
 前の発言と繋がっているようであまり繋がっていない内容に、思わずげんなりとした表情を浮かべる。いつもの事とはいえ、やはり面と向かって言われると何ともいえない。
「ったく……たまには平和的な発言でもしてみやがれ」
「黙れ。貴様がおらねば我がこのような失敗をすることも無かったのだ。ならば貴様を抹殺して我の気を晴らすのが当然の流れというものであろう」
「気を晴らすって言ってる時点で既に駄目じゃねぇか」
 というか、それが本音だろう。汚名返上とか普通に建前だろう。
 手に取るように分かる元就の本音に少し憂鬱な気分になりながら、未だ室内で寝息をたてている政宗の方にちらりと視線をやる。それほど騒いでいないにしても、これだけ長く会話を部屋の入り口でしているのだし、流石にそろそろ起きてもいい頃だと思うのだが。
 一体いつまで寝ているのだろうかと、先ほど寝かしておいてやりたいと思った身でありながら、元親はほんのりと呆れた。






夢の中で、多分、政宗は幸村とバトルしてたりするんだろうなぁとか。
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