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本当はこの二人で恋愛相談話しようと思ってたのですが、いつの間にか方向ずれちゃいまして。気がつけば親子話になってました。
それにしても、このサイトにおける罪歌出現率は割と高いですね……。



 平日だというのに、街には相も変わらず人が溢れていた。
 それの光景を、公園のベンチに座ってぼんやりと眺める。
 私服の大人たちがいた。親に手を引かれる子供がいた。散歩中らしい老人がいた。学校をさぼっている少年少女がいた。急いでどこかへ走って行くスーツ姿の男がいた。のんびりと携帯をいじりながら歩いている女がいた。ガラの悪そうな不良たちがまとまって歩いていた。車に乗る人がいた。青い空を見上げて首を傾げる幼児がいた。信号を無視して車を急発進させた誰かがいた。最も愛しいと思う人は、いない。
 はぁ、と息を吐く。
 いるわけがなかった。彼は今、仕事中なのだから。もしも会いたいと思うなら、こちらから彼のいる場所へ行かなければならないだろう。もっとも、彼が今、どこで仕事をしているのかが自分には正確には分からないのだが。
 言いかえるとそれはつまり、漠然とは分かるという事でもある。そして、だからこそなのかもしれない……自分が現在抱えている感情が、憂鬱であるのは。
 彼の居場所が何となく分かるだけで、ハッキリとは分からないもどかしさと。
 会いに行きたいのに会いに行ってはいけないという口惜しさとが。
 混ざりに混ざって憂鬱さを生みだしているのだろう。
 ……いっそ、行ってしまおうか。行ってはだめと同居人であり宿主でもある彼女から言われているけれど、だからといってそれを素直に守ってやることもないだろう。
 そう思いながら、けれども、腰を上げようとはどうしても思えなかった。
 というのも、愛しい愛しい彼から言われているのだ。宿主である彼女のを困らせるような事をしてはいけないと。それは約束といった態では無く、単なる注意として自分に与えられた言葉だったけれども、何にしたって彼の言葉なのだ。そう簡単に逆らう様な事はしたくない。もちろん、色々と例外はあるが。
 まぁ、そういうわけだから、自分から会いに行くのは少し憚られる。
 わざと行ってわざと怒られてみるのも幸せな感じがして良いなぁと思うけれど、どうせ会うなら仲良く会話したい。
 自分から会いに行くのではなく、彼に『偶然』会えるように、彼が仕事中に移動で使うかもしれない路地裏を張っておこうか。それならば会いに行ったわけでは無くて、偶然ばったり運命の様に出くわしたという事で、とりあえず彼女に言われた事を守っていることになるだろう、きっと。
 そうと決まれば話は早い。
 立ち上がり、ふらりと体を前に進める。
 公園を出て、制服姿の男子と首にぐるりと傷を付けている女子の二人組の脇をすり抜けるように通り、寿司の出前をしているロシア人を目撃しながら、てくてくてくと。たまに立ち止まってそれらしい路地が無いかときょろきょろ視線を巡らせながら、歩き続ける。
 途中、あまり会いたくない、というかこの世界から消えて欲しい……いや、いっそ自分が消してしまおうかななんて思っている黒いのを見かけたけれど、それは全力でスルーした。あれを見張っていたら彼に会える可能性も高くなるのだろうが、彼に会えるまでずっとあの状況屋を見続けていなければならないのは普通に、嫌。
 今日こそ投げられた自動販売機に頭を直撃させて即死すればいいのに、と軽くも本気で願いながら、歩き続け……続けて、止まった。
 否、止められた、というべきか。
 唐突に背後から叩かれた肩に触れながら、罪歌はくるりと振り返った。
 そして、軽く目を開く。
「あら……貴方。久しぶりね」
 まさか目にするとは思ってもいなかった姿にそう声をかけると、相手は嬉しそうな表情を浮かべて頷いた。
「はい。久しぶりです」
「しばらく見ていなかったけれど、元気そうで何よりだわ」
「ありがとうございます。母さんも元気そうですね」
「当然よ」
 自分よりも背の高い『子供』に頷いて見せてから、はてと首を傾げる。『子供』は、平日であるというのに制服を身につけていなかった。
 風にひらりと揺れるスカートを視界の端に捉えながら、尋ねる。
「……学校はどうしたの?今日は平日よ」
「今日は創立記念日で、お休みなんです。心配してくれなくても大丈夫ですよ、母さん」
「へぇ……じゃあ、つまり、今日は一日空いているのね」
「まぁ、お休みですし」
「用事は?」
「無いんですけれど、たまには外に出るのも良いかと思って」
「ふぅん……」
 成程、と心の中で呟いて。
 ぽん、と罪歌は手を打った。
「なら、一日、私に付き合いなさい。お昼ぐらいは奢るわ。どうせ私のお金じゃないし」
「え……でも……そんな、悪いです」
 しかも宿主の金でもなく、この間あの情報屋の財布から掠め取った金である。
 だから本当に問題ないのだった。
 なのに申し訳なさげに委縮してしまっている『子供』に、苦笑しながら母親として言う。
「たまには、親らしい事をさせて頂戴?」
 その言葉に、微かに瞠目して。
「……はい!」
 『子供』は……贄川春奈は、嬉しそうに微笑んだのだった。






贄川さんは、ある意味罪歌の子供たちの長女ポジションだったりするのだろうかとかふっと思って見たり。元・母だったわけだし、『子』とはいえ罪歌と折り合いも付けれてたし、それなりの存在だったりするのかもしれない。というか、だったら私が嬉しいです。
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