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というわけで、仮定の話です。



 例えば。
 本当に例えばの話なのだけれど。
 もしも仮に、自分と彼の住む世界が全く違っていて、なおかつ彼の住む世界を自分が住む世界から見る事が出来たとしたら。
 遠い世界の住人として、彼の姿を見る事が出来たなら。
 もしかしたらでしかないけれど、彼の事を好きになれたかはともかく。
 嫌いになる事は、なかったのかもしれない。
 遠い遠い世界の住人として、小説やアニメや漫画や映画の中にしか存在しえないキャラクターとして、認めてやることくらいは出来たのかもしれない。
 何故かといえば、簡単な事。自分の傍にいないから。
 自分に被害が及ばないと分かっているのだから、恐れる必要も忌避する必要も敵意を抱く必要も何も無いのだ。故に、認めてやることくらいは出来たのかもしれない。現実での自分の様に、現実の彼に対して殺意を抱くようなことにはならなかったのかもしれない。
 そう思いながら、決してそんな風には成らなかっただろうとも思う。
 自分は彼の事が嫌いだ。大嫌いだ。そしてその理由は、理屈では無い。ただただ一目見た瞬間に、察したのだ。彼と自分は相容れないと。
 だからきっと、彼がどこの住人であっても、自分が彼を受け入れる事は無いだろう。彼の性格が変わってしまったとしても、受け入れる事など出来ないかもしれない。恐らく自分が嫌っているのは彼の性格では無く彼という存在そのものだ。
 と、いうわけだから。
 この『例えばの話』は、本当に意味を持たないくだらない仮定でしかない。先に結論が出ているのだから、仮定とする必要さえないくらいの物なのだった。
 ……けれども、まぁ。
 嫌いの具合くらいは変わったのかもしれないけれども。
 殺したいほどではなく、死ねばいいと思うほど。
 大嫌いでは無く、嫌い。
 そんな風に、なったのかもしれないけれども。
「もっとも、こんな事は考えたって意味無いなんだけどね」
 空を舞い自分めがけて降ってくる自動販売機を見上げながら、やれやれと臨也は肩を竦めた。
「俺がいてシズちゃんがいるっていう現実は、考えたくらいじゃ変わらないんだから」
 






現実と虚構の違いというか。
何か抽象的ちっくでごめんなさい。
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