忍者ブログ
式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


薬害ではなくて厄害。内容的には同じだけども。まぁ、つまらないギャグみたいな題名ということで。
白辺高校で、ギャン先生の薬再び、って感じです。



 何がどうなってそうなったのかは知らない。
 ただ、そうなってしまった事だけが事実としてそこにあった。
「……一体私はどうしたらいいんだ?」
「うーん……とりあえず今日はそこら辺に隠れとけば?今回ばかりは流石にお前を放り出す気にはなれないし、出来る限り協力してやるからさ」
 ガンダムの同情心あふれる言葉を机の下で聞きながら、シャアは先ほど遭遇した恐ろしい展開を思い返していた。
 六時間目の授業中に、気分が悪いと言って眠りに行ったララァの見舞いにと、保健室へ行ったところまでは良かったはずだ。しかしそこで目を覚ましていた彼女は何故か、手にカッターナイフと呼ばれるものを持っていて、こう言ったのだ。
「『死んでくれる?』……か」
「ん?何それ」
「いや、ララァが私と顔を合わせた途端に零した言葉なんだが」
「……シャア、お前まさかララァさんが怒る様な事……」
「やってない!だが……ララァがあぁなった原因は知っている」
「へ?」
「ギャンだ」
「……あー、成程」
 納得の籠った声音が降ってきたのと同時に、職員室に置いてある様な机の下で小さくなったままに腕を組む。
 この学校では変な事態はイコールでギャンの妙な薬に繋がる。濡れ衣である場合も無きにしも非ずだが、まず疑ってかからなければ真実へ辿りつけないと言うのが現状である。まぁ、濡れ衣があったとしたって、疑われる様な前科を無駄にたくさん持っているギャンの方が悪いのだから仕方が無い。
 しかし、今回はギャンの仕業である事は既に調べ済みだ。何でも『ヤンデレになる薬』とやらを作って、ララァの飲み物にこそりと混ぜ込んでくれたらしい。何でよりによって彼女をターゲットにしたのかと拳で訊けば、鼻血を出しながら適当に選んだのだと教えてくれた。……なんて迷惑な。
 ちなみに、あと二つくらい薬を混ぜ込んだ飲み物を作りだしたとかで、それを聞いた時、もう何でもいいからこいつはどこか遠いこの学校とは関係のない場所に飛ばしてくれないだろうか、と思ったのは当然の事だっただろう。
 それにしても……生徒会室に置かれている机が大きめで、隠れるのにはもってこいな構造をしてくれていて良かった。ガンダムも協力してくれると言うし、多分しばらくの間は隠れきれるはずだ。
 そんな事を思っていると不意に、がら、とドアが開かれる音が鳴った。
 思わず体を緊張させる。
「……あら、ガンダムだけなの?」
 果たして、聞こえてきたのは今だけは一番聞くのを遠慮したい声。
 恐怖で強張り何もできない状況でも、足音が近づいてくる音だけは耳に届く。
 ……ガンダムがどうにか誤魔化してくれますようにと、祈るどころか縋る様な思いで願った。願うしかなかった。
 そんなこちらの気持ちも知らないだろう彼女は、不思議そうな声で…多分、首を傾げた。
「おかしいわね……ここにいると思ったのだけれど」
「ラ……ララァさん、えっとその、その手にあるのは何です、か?」
「包丁よ。家庭課室からもらってきたの」
 ……カッターナイフからヴァージョンアップしてる!?
「えぇとえぇと……それは何に使うおつもりで?」
「もちろんシャアを刺すのよ」
「……何で、ですか?」
「だって愛してるんだもの」
 さらりと告げられた言葉は、こんな状況でなければ天にも昇る様な気持ちを抱かせるような内容だった。だから尚更に現状が悔やまれる。これが普通の状況だったら、自分は素直に喜びを表せたはずなのに。
 残念な話……どころではなかった。間違いなく
「……これってあれかなぁ……殺して私だけのモノに、っていうパターンかなぁ……」
 小声で呟くガンダムの言葉は重力に従うようにシャアの元に降って来て、少し他人事のようにそんな事を言える彼を羨ましく思った。ヤンデレがどうのこうの、という薬だと言っていたから、多分そうなるんだとは思うのだが……それを小さくにでも口に出せるポジションにいる彼は本当に運が良い。
 自体の渦中にいたら正直、思っていてもそんな事を口にする事は出来ない。
 それどころではないのだから、本当に。
「でもおかしいわ……絶対にシャアはここにいるのに……何で見えないのかしら」
「え……いや、いないかもしれないじゃないですか」
「いるのよ。私には分かるわ」
 断定する彼女に、再び体が強張るのを感じた。そう……そうだった。ララァは『普通じゃない』のだった。悪い意味では無い意味で、普通とは違う不思議な何かを持っているのだと言う事で。だから、この部屋から彼女は何かを感じ取ったのかもしれない。
 どうか勘違いだと思って去ってくれますように。
 本日何回目かの願い事をしていたシャアは、ふいに目の前からガンダムの足が消えたのに気が付き、視線を少しだけそちらに向けて。
「みーつけた」
 優しい微笑みを浮かべ、こちらを覗き込み、包丁を胸に抱く恋人の姿を見た。







……包丁を持って笑うララァさんって、悪夢以外の何物でもないと思うのだけれども。だってほら、あの人最強だからさ……そんな様見せられたら諦めしか浮かばないというか。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カウンター
プロフィール
HN:
式ワタリ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
ガンダム大好き生物。キャラも好きですが、機体も大好きです。実は(?)、今は軽く三国伝にすっ転んでます。
最新CM
[09/28 ナワ]
[06/15 オシロマミ]
[11/02 banana]
[11/02 式ワタリ]
[11/01 犬っぽい]
最新TB
バーコード
ブログ内検索
フリーエリア
忍者ブログ [PR]