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チャットもどきのその後のお話。ログアウトした二名のお話です。
パソコンの電源まで切って、臨也は机の向かいに座っていた『もう一人』をディスプレイ越しに見やって薄く笑った。
「で、初めてのチャットはどうだった?」
「……手前がウザかった」
予想通りの言葉に、さらに笑みを深める。
「ま、兎にも角にもお疲れ様。慣れない事して疲れたたでしょ、シズちゃん」
「…………分かり切った事を聞いてくる手前ってマジでうぜぇな……」
「仕方ないだろ?俺は昔からこうなんだからさ」
くすくすと笑って、未だ煌々と明かりを零すノートパソコンの傍らで、ぐったりと机に突っ伏している金髪をくしゃりと撫でてみた。
ぴくりとも動かず最早屍の様になった喧嘩人形の髪を梳きながら、反撃はおろか反応すら出来ないくらい精根尽き果てているのかと、思わず呆れる。たかだかチャットごときでよくもまぁ、ここまで疲れきる事が出来たものだ。称賛してやっても良いかもしれない。
そう思い、いや、と首を振る。
チャット自体も、彼にとっては疲れる物だったかもしれない。けれども、それ以上に彼にとって厄介な相手がいた事は間違いない。恐らく池袋最強がこうなってしまったのには、彼と自分が行っていた『ゲーム』のルールが大きく関与しているはずだ。
「ま、全部シズちゃんに不利なルールだったしねぇ。……チャットの中でのみ会話可。リアルで喋ったら負けで、リアルで手を出しても負け。使っているパソコンを壊しても負け。途中で席を立っても負け……だしね。制限時間制だったのがせめてもの救いかな?」
静雄には聞こえない程度の大きさで呟いて、肩をすくめる。
こんな聞くからに静雄の不利にしかならないようなルールを持った『ゲーム』を、どうして彼が受けて立ったのかなんて分かり切っているけれど。
「馬鹿だよねぇ、シズちゃんって」
「煩ぇ……」
今度は目の前の彼にも聞こえるようにと普通の大きさで紡いだ言葉は喧嘩人形にしっかりと届いたようで、身じろぎこそしなかったが、彼は確かに反応を見せた。
それに何となく満足しながら、頭をなでる手を止めずに口を開く。
「覇気がないよ。池袋最強の名が泣くんじゃない?」
「別に……そんな呼び名欲しかったわけじゃねぇからどうでも良い…」
「らしい台詞といえば、らしい台詞だね」
「手前に俺らしさを口にされたくねぇ……」
「はいはい。ごめんね」
こちらの手から逃れようともしない静雄に言葉だけの謝罪を送って、臨也は微笑みを浮かべた。
なんだかんだで仲良しなお二人でした。
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