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折原さんちの事務所のお話。といっても波江さんしか出てこないよ。



 気が付けば、街の風景は数日前から一変して別の物へと変わっていた。
 随分と変わり身が早い事だと、マンションの一室から下界を見下ろし呆れる。この間まではクリスマス一色だったのに、今ではすっかり年越しムードだ。まぁ、一週間程度しかクリスマスと大晦日の間に期間が無いわけだから、この急変も当然と言えば当然ではあるのだろうけれども。
 もっとも、そんな事は今の自分にはあまり関係ない。クリスマスも大晦日も、昔ならともかく現在では完全に別世界の話だった。そして、これからもずっと別世界であると思い続けていた、のだが。
「まさか、ほんの少しでも関わり合いになる事になるとはね……」
 呟いて、腕を組む。そうして思い出すのは昨日の出来事だ。
 昨日、普段通りに出勤してきた自分に、雇い主はしばらく仕事に出てこなくても良いと言ってきたのである。何の前触れも無く、挨拶代りに簡単に。
 その言葉を訊いた瞬間に波江が感じたのは、二種類の感情。しばらく臨也の顔を見なくても良いという事実に対する歓喜と、突然どうしたのだという訝しさだった。
 自分がいなくても確かに彼は仕事を滞りなく実行できるだろう。だが、自分がいる事で仕事が手早く、効率的に実行できると彼は既に知っているはずだ。だというのに、少しの期間でも自分の出勤を止めるという。……ならば、何か理由があるはずだ。
 そう思い、どういう事なのだと問いかければ、返ってきたのは拍子抜けする様な言葉。
 曰く、大掃除をするから。
 なんでも、事務所はそこそこの大きさを誇るため、一人や二人では掃除をするのも面倒なのだという。だから、信者の少女たちを呼べるだけ呼んで、代わりに大掃除をしてもらうのだとか。その際、重要な機密が万が一にも少女たちに伝わっては困るから、重要書類を持って数日間別の場所に滞在して欲しいと、彼はそう言ってきたのである。
 というわけで、自分は今、重要機密たちと共に事務所を離れているのだった。
「しかし……数日って、何日かしら」
 事務所を離れる期間は正直、どれ程まででも構わないが、だからといって何も知らされていないのは少々困る。
 後で連絡を入れるべきだろうかと思いながら台所へ向かい、備え付けの冷蔵庫の中の、あらかじめ買い置いてあった出来合いの食品を選び取る。
 もしかしたらこんな生活のまま年を越すのかもしれない。
 ふとそんな考えが頭をよぎる。
 その可能性を否定できるだけの要素は、残念と言うべきか幸いと言うべきか、全く見当たらなかった。







そして実際年をまたぐ予感。
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