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折角の年越しデーなのだから、それっぽい話をupしないとと思ったが故のお話。臨也と静雄です。

 



「年越しと言えばやっぱり紅白だよねぇ」
「……オイ」
「オーソドックスに過ぎるかもしれないけれど、だからこそ紅白を見るべきだと俺は思うんだよ。王道が王道になるのは、王道が素晴らしいからさ」
「……ミノ蟲手前無視してんじゃね、」
「しかし、俺も一人の人間だ。他のテレビ番組が気にならないわけじゃない。だからこそ、パソコンとかDVDとかの録画機能をフル活用するわけなんだけれど」
「っ……臨也!」
「なぁに?シズちゃん、年越しの夜くらい静かに過ごせないの?」
「……………………っ!」
 にこやかに笑みを浮かべて手を振って来る仇敵の姿を見たというのに、手に持っていた箸を握り折らなかった自分を褒めてやりたい。そう思いながら、静雄は折らない内にと箸をコタツと化している机の上に置いた。実際はまぁ、置いた……というか、叩きつける、だったわけなのだけれども。
 そんな状態だったのに、幸いにも箸は折れず、机もひび割れなかった。その事に安堵しながら、改めて臨也の方を見る。
 彼は年越しそばの入っている椀を左手で持ちあげ、右手で箸とテレビのリモコンを持っていた。つまり、今、自分の家のテレビのコントロール権は主に彼が持っている事に……いや、そんな話は今はどうでも良い。腹立たしいことこの上ないが、現状においてはどちらかと言えば、どうでもいいことなのだ。
 一番の問題は、折原臨也と言う名の一種の癌細胞が、何故だか知らないが自分の家に我が物顔で存在している事だった。
 一体いつからいたのか。それを悟らせないままに静雄の家に侵入してきた臨也は、気が付けば勝手に台所で年越しそばを作って勝手に食べていたのである。ちなみに、臨也は静雄の年越しそばまで作っていた。……本当にわけが分からない。
 ノミ蟲は気に要らないが作られた年越しそばには罪は無い。ずっと、その思いから彼の作りだした蕎麦を食べていたのだが、ふっと現状について疑問を持ったのがつい先ほど。
 そして、先ほどの会話に至るのである。
 こちらの言葉を無視するだけ無視していた情報屋は麺をすすりながら、何が楽しいのか分からないが、相も変わらず笑みを浮かべていた。
「ま、シズちゃんが何を思ってるかくらい俺にはお見通しだよ。どうして俺がここにいて、どうしてシズちゃんと一緒にシズちゃんの家のコタツに入っていて、どうして一緒に年越しそば食べていて、どうして一緒に紅白見てるのかって考えてるんでしょ?」
「……」
 ……全く持ってその通りだった。
 思わず口を閉ざすと、気を良くしたのか、彼は若干テンションを上げて言葉を続けた。
「どうしてシズちゃんの家でシズちゃんと一緒にコタツに入っているのかというとね、それはコタツがシズちゃんの家におけるたった一つの暖房器具だからだよ。……悪い事は言わないからエアコンくらい買ったらどう?」
「電気代がかかるだろうが」
「そのくらいどうにかしなよ……風邪引くよ?ま、そうなってくれたら俺としては万々歳なんだけど。……で、どうして一緒に年越しそばを食べてるのかと言えば、それは今が大晦日の夜だからだよ。誰と一緒であれ、年越しの夜何だから年越しそばは食べないと」
「……何となくそれは分からなくもねぇけど」
 分からなくもないが、何かが違う気がするのは気のせいだろうか。
 眉を寄せて腕を組み、考え込むこちらを気にした風も無く、彼は続ける。
「どうして一緒に紅白を見てるのかと言えば、それは俺もシズちゃんも、年越しの夜は紅白派、だったからだね。おかげで喧嘩せずに済んだよ。ありがとう」
「感謝される筋合いねぇし、その単語を手前の口から聞くと鳥肌立つから黙れ」
「酷いなぁ」
 くすくすと笑って臨也は応じ、両手を広げた。もちろん年越しそばの椀、リモコン、箸は手に持ったままで。
「と、まぁ、こんなところかな?シズちゃんが疑問に思っていたであろう事にはだいたい答えたつもりだけれど、まだ何か訊きたい事ある?」
「……そういや」
 始めは、無い、と答えようと思った。実際、無い、と答えても良いかと思うくらいには、彼は良く喋っていたから。……けれども、思い至ってしまったのである。
「結局手前、何でここにいるんだよ?」
 彼が、その問いには答えていない事を。
 だから、どうなんだ?と尋ね、静雄は首を傾げたのだった。
「…………それはね……」
 すると、臨也は萎んだ。
 先ほどまでの笑顔やテンションが嘘のような彼の様子に、少しうろたえる。
 そして、自分の様子をまたもや気にした風も無く、彼は言った。
「波江さんがね……年越しくらい弟と一緒にいたいっていうからさ……」
「……あぁ、手前、また一人なのか」
「そうだよ!また一人なんだよ!だから来たんだよ悪い!?」
「……そう居直られると帰れって言い辛ぇな」
 仇敵とはいえ、目に涙まで浮かべられて力説されると追い返し難い。
 仕方ないかと自分の年越しそばの椀を取り、ずず、と汁をすする。
「今回だけ、だからな」
「……!うん!ありがとうシズちゃん!」







つまり、お話冒頭~禁断の質問をするまでの笑顔は空元気の証なのです。
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