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お正月シリーズ第二弾・初夢。
というわけでマイスターズ。皆様良い夢をー!
10.うたた寝
視界いっぱいに広がる白に、ライルは思わず固まった。
確かに、目を開ければ白色の壁が見えるような場所……つまりトレミーの中にいたことはいた。だから、白が見えたとしても驚く事は無いのかもしれない。……が、残念ながらこれは驚くべき光景だった。というのも、今見えている白は、決して壁の白とは相容れないものだったのである。
ひんやりとした心地よさを与える壁とは違い、こちらは凍える様な寒気を纏っている。足元に多く存在しているそれを掬い上げれば、手袋越しにも冷たさを感じる事が出来る。もしも素肌で触っていたら、手が赤くなるのと引き換えに、それは水になっていただろう。
……まぁ、ハッキリと言ってしまえば。
それは、雪だったわけだ。
先ほどまでトレミーの中にいたのに、そこでうとうととしていたはずなのに、一体どうしてこんな事になっているのだろう。
そんな風に思いながら呆然と雪の大地を眺めていると、不意に、背後から聞きなれた声が届けられた。
「何をしているんだ、ライル・ディランディ」
「……ティエリア……か」
振り返り、その姿を視認した所でようやく息を吐く。……正直、寒さ対策なのかあまりにも上に服を着過ぎているために、ティエリアが彼の搭乗機のような姿になっている事に対してツッコミを入れようかとも思ったのだが、そんな事よりも知り合いがこの場にいたという事の方が今の自分にとっては重要だった。……なので、敢えてスルーすることにしておく。ここで下手な事を言って機嫌を損ねるのも下策だろう。
辺りをぐるりと見渡し、自分たち以外が存在していない事をわら溜めて確認してから、しみじみとした気分でしみじみと呟く。
「アンタもここにいたんだな……俺しかいないかもしれないって思ってたぜ」
「……まぁ、この山にいるのは君と僕だけだがな」
「……あ、そうなんだ?」
「他のメンバーは普通に初詣に行ったぞ。もちろんアニューも。……新年早々富士山に登ろうという変人は君だけだったというわけだ」
「……何?俺が言い出したの?この状況って俺のせい?」
「何だ、覚えていないのか?」
言って、彼は呆れたような表情を浮かべた。
「酒に酔ってはいなかったはずだが……」
「まぁまぁ、そう言うこともある時はあるだろ」
に、と笑って話しに入ってきたのはニールだった。
彼は男物の着物を着て、右ひじを曲げた状態で、右腕を地面に水平になる様に持ち上げていた。そこに止まっているのは、鷹。
既に、辺りは白い台地では無くなっていた。
唖然と周りを見渡しても、先ほどまでの雪山の光景は片鱗も見出すことが出来なかった。そして何故か、ティエリアもいなくなっていた。
……もしかしなくてもこれは夢なのだろうか。
ならばトレミー内では無く雪山にいた事に説明もつくと、額に手を当て息を吐き、今は出会う事も出来ないはずの兄の方へ視線を向ける。
「兄さんはスナイパーから鷹匠に仕事変えか?」
「そういうわけじゃないんだけどな、何か懐かれたみたいで離れてくれないんだよ。……もしかして、さっき茄子やったからか?」
「鷹って茄子で懐くのかよ……」
「可能性はある」
と、言ったのは刹那だった。
彼はぎっしりと茄子の入っている小さな鍋を抱え、じぃ、と自分と兄を見ていた。その表情は至極真面目な物である。
「この茄子はガンダムブランドの茄子だからな」
「ガンダムブランドってお前……」
「はははっ、なら確かに鷹だって懐くかもな!」
「兄さんは今の発言を普通に受け入れないでくれ!」
「だってお前、ガンダムブランドだぜ?」
有り得るだろと笑いながら言う兄と、何故か自慢げな顔で胸を張る刹那。
そんな二人を見て、脱力したところで。
「ライル……大丈夫?」
自分を覗き込むアレルヤに出会った。
彼の背後には、見慣れたトレミーの天井。
心配そうな彼の表情は、夢の中でティエリアに出会った時よりも多大な安堵を自分に与えた。
「……うなされていたけど、何か嫌な夢でも見た?」
「嫌な夢、か……安心しな。そんなもんじゃ無かったぜ」
やれやれと肩を竦め、言う。
「縁起のいい、単なる普通の夢だったさ」
富士山、鷹、茄子。一応全部、話の中には出てきてるのですよ。
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