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お正月シリーズ第三段・お年玉。ヴァリアーです。ちょい短め。
「少ない」
受け取った封筒の中身を見て、その赤子が一番最初に言った台詞がそれだった。
可愛らしいプリントもない、何のデザインもされていない、味気ない茶封筒をひらひらと両手で揺らしながら、マーモンはやれやれと言った態で言う。
「僕の外見が赤ん坊だからって、これは流石に無いと思うんだけれど。最低でもこの五倍……いや、十倍は欲しいところだね」
日本円にして約五万円くらいは入れていたはずなのだが、何だ、それでも不満なのか。
こんな事ならば当初の予定通り、封筒の中に入れる額は実際に入れていた金額の五分の一くらいでよかっただろうか。そんな事を思いながら、スクアーロは腕を組んだ。
「ンな要求きき続けてたら俺の所持金が空になんだろうがよ……」
「やや金持ちが何を……って、あぁ、あの王子様もいるし、有り得るか。きっと彼、法外な額を要求してくるんだろうね。……あ、もしかしてベルには先に渡してきたの?」
「先に会ったからなぁ……」
正確に言うと待ち伏せられていた、のだけれども。
起きて自室から出て、一番最初に見る事になった金色の髪を思い出しながら、呻く。まったく……どうして待ち伏せなどしようと思ったのか。そんな事をしなくても、渡す物はきっちりと渡すつもりだったというのに。出来るだけ早く手に入れたかった、と言う事なのだろうが、それにしたってあれはどうかと思うのだ。
いっそ待ち伏せなどせずに、自分の部屋に入って自分を叩き起こし、目的の品を強奪して行けばよかっただろうに。どっちにしたって問題行動ではあるし五十歩百歩なのだろうが、後者の方がまだマシだった様な気がする。
額に手を当て嘆息すると、浮いていた赤子が自分の頭の上に降りた。
鮫の頭の上に赤ん坊。
傍から見れば何とも言えない光景なのだろうが、既に自分たちは慣れっこだった。
慣れっこなので、会話は当然の様に自然と続く。
「で、彼にはいくら払ったのさ」
「お前と同じ額だぁ。それ以上はびた一文、渡さなかったぜぇ」
「ふぅん、頑張ったんだね。ちなみに王子様からの請求額は?」
「封筒の中身の一万倍」
「……それは無茶振りだね」
「っつーか、これ、言外に俺に破産しろって言ってねぇかぁ?」
「そんな事は言っていないと思うよ。ただ、王子様のために泥水を啜るような生活をしろとは言っていると思うけれども」
「殆ど同じじゃねぇか」
自分の言った通りであれ赤子の言った通りであれ、とにかく貧苦を味わう事は間違いなさそうだった。
五万円の一万倍って、どうなんだろう……王子的にはわりと当たり前っぽいけど。
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