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元就さんは強いよ!というメル友話。日輪学院で、生徒会s。相変わらず副会長はいないんだよね・・・あの人は取り締まり頑張ってるから。



 それはある意味珍しい現象だった。
「誰の?」
「我の物であるようだな」
 生徒会のデスクワーク中に突如鳴り響いた着信音に首を傾げると、元就が鞄の中に入っていた彼自身の携帯電話を取り出し静かに頷いた。
 生徒会長が携帯を開く様を眺めながら、本当に珍しいことだと政宗は思った。生徒会のメンバーが今、この時間に仕事をしているという事はだいたいの生徒・教師の知るところであり、基本的に電話がかかってくる事は無い。メールはたまに届いていたりするが、それはメールがメールであるが故だろう。電話と違って後でもそれは確認出来る。
 だから、仕事中はだいたい誰もが携帯をマナーモードにしている。滅多にないこととはいえ、メールが来る可能性もあるのだから、それは正しい対応だろう。
 ただしそれは決まり事と言うわけではなく、自然と出来あがっていた単なる暗黙の了解だ。マナーモードにしていなかったとしても咎めがあるわけではなく、だからといって文句を言われないわけではない。
 その辺りの事を考えると、やはりマナーモードにしておくのが無難な所だろうし、それを毛利元就ともあろう者が分からないワケがないのだ。
 だからこそ、これは珍しい現象なのである。
「君がマナーモードにしてないなんて珍しいね」
 そしてどうやら政宗が思っていたのと同じ事を半兵衛も思っていたらしい。ボールペンを動かす止め、物珍しげに元就を見やった。
「もしかして、着信があったらすぐに応答したい様な人でも出来たの?」
「まぁ、そのようなところか」
「へぇ……彼女?」
「その様な事があると思うか?」
「思わないね。君なら彼女よりも仕事を取るだろうし」
「分かっておるではないか」
「おほめにあずかり至極光栄。で、実際誰なのさ」
「政宗の御母堂であるぞ」
「……………………………え?」
 楽しげな半兵衛の声と静かな元就の返答を聞き流していた政宗だったが、流石にその言葉まで聞き流す事は出来なかった。
 間の抜けた声を出し、唖然としながら元就を見やる。
 出来れば否定の言葉が欲しい。そんな思いを込めて視線を送ったのだが、彼は腕を組んであっさりと平然と言い放った。
「だから、そなたの御母堂と我はメル友になったのだ」
「……い……いつだ?」
「この間の参観日の日にな。以来、情報を色々とやり取りしているぞ」
 色々と。
 彼はそう言うが、けれどもどうせあの人と交換できる情報なんて殆ど種類が無いだろう。大抵の事はあちらで、あっという間に調べる事は出来るはずだ。と、なれば。彼が渡している情報も多少は想像がつくわけで。
 それが主に自分にまつわるものであろうこともまた、自然と分かる事。
 さぁ……、と顔から血の気が引いて行くを感じながら、政宗は勢いよく腰を上げた。がたん、という音がすぐ傍から聞こえたが今は無視である。
 問題は、こちら。
「何を教えやがった?」
「特に大したことは教えておらぬぞ」
 自分が焦っている事がどうやら彼には分かっているようで、けれども余裕綽々の表情を浮かべてさらなる焦燥を抱かせようとしている様はまさに鬼……あぁ、違う。鬼は他にいるのだから、彼はもっと別の物。悪魔とか、そういう辺りで良いだろう。実際、今、自分にとって彼は悪魔にも等しい存在なのだから特に違和は無い。
 ふと仲間になってくれないかと、ちらりと視線を半兵衛に向けると、彼はこちらもあちらも見ることなく、黙々と仕事を続けていた。どうやら我関せずの立場を取るつもりらしい。……が、自分の反応がおかしかったのか何なのか、肩が若干震えているので、知らんぷりを突き通すのは既に失敗していた。
 そんな事、彼とて分かっているだろう。けれどもそうする事で『僕はどちらにも付かないよ』という意思をハッキリと露わしている。そしてその時点で既に、彼が求めている効果は出てるのだ。
 結局味方は無しかと舌打ちをして、改めて生徒会長の方を向く。
「元就、今すぐ止めてメアド消せ。千円やるから」
「断る。これほど面白い事を我は他に知らぬのでな」
「じゃあ一万円」
「政宗よ、世界には価値を付けられぬほど素晴らしいものがあるのだが?」
「そのメアドがそんなに素晴らしいモンなわけねぇだろ。価値が付けれねぇ程素晴らしい物だってんなら、それがあるせいで俺がここまで不幸な気分になったりはしねぇ」
「ふむ。それもそうかもしれぬな。ならば無理矢理価値を付けみるとして……だいたい三十万くらいが妥当であろう」
「は!?」
 何でそんなに高くなっているのだと思わず叫ぶと、元就はにやりと笑った。
「言っておくが、我は譲るつもりは無いぞ。……さて、どうする?」
 三十万円などと言いだされては……どうするもこうするもない。
 はぁ、と息を吐いて、政宗は腰を下ろした。







高校生にとってその値段はアウトでしょう、きっと。
それでも多分、貯金がたまったら再び交渉しに来るんじゃないかな(伊達さん)。
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