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四、五年前は沙慈と刹那も凄く平和的な関係だったよなぁとか思いつつ。
まぁ、CBって知らなかったし、巻き込まれてもいないしですからね。
11.宅配便
「次の宅配先は……って、え……?」
バイトで、沙慈はピザを届けていた。それはいつものこと。
けれど、今回ばかりは勝手が違う。
何故なら。
「ここって……刹那の部屋、だよね……」
目の前にあるのは刹那・F・セイエイの部屋。自分の部屋のお隣さんなので、これだけは絶対に間違えることはない。というか間違えたら大問題だろう、これは。
それはともかく、沙慈はピザの入った箱を持ち、その部屋のドアの前に立っていた。
インターホンを押して、彼を呼び出さなければならない、のだが……何故だろう。他の場所では躊躇いなく出来るというのに、今、全くやろうという気が起きない。これは何だろうか…お隣さんの所へわざわざピザを宅配する事実が、ちょっと恥ずかしいのだろうか。
そんな自己分析をしている間に、がちゃり、とドアが開いた。
慌てていると、出て来たのは……刹那じゃなかった。
「あれ?宅配の人……ですか?」
キョトンとした顔をしていたのは、とても背の高い男の人だった。
鋭い目つきに穏やかな感じ、というミスマッチさに戸惑って何も答えられないでいると、ふいに、その人はリビングの方を向いた。
「刹那……ご飯はこっちで用意する、とか言ってたけど……出前頼むんだ……。せっかく君の手料理、食べられると思ってたのにな……」
「期待を裏切って悪いが、家には材料が無……」
そうして、ひょっこりと顔を出した刹那と目があって、固まった。
動きを止めた沙慈たちを見て、男の人は首を傾げた。
「えっと……知り合い?」
「…沙慈・クロスロード。隣に住んでいる学生だ」
「……あぁ!刹那がたまに話してくれる人だね!」
ポン、と手を打って、それから男の人は自然な手つきで沙慈からピザの箱を取る。
それをいつの間にか近寄っていた刹那に渡して、手の空いた自分の手を握ってニコリと笑った。
「初めまして。アレルヤっていいます」
「あ……沙慈・クロスロードです」
「沙慈・クロスロード、それは俺がもう言った」
あまりの急展開に動転しながらも答えれば、ピザの箱を両手で抱えてこちらを観察している刹那が、ボソリとツッコミを入れた。……そこは分かっているけど、名乗られたのならこちらも名乗るべきだろうと、そう考えたのだけども。
とりあえず、刹那はどこか不機嫌そうだった。
何でだろうと首を傾げている内に、未だに笑顔を浮かべた状態の男の人……アレルヤが、クスクスと笑いながら再び口を開いた。刹那の状況には気付いていないらしい。
「学生って事は……バイトしてるんだ。偉いね」
「そんな……小遣い程度ですよ…」
「でも偉いと思うよ?」
優しげな言葉に裏はない。
しかし、彼ではなく、彼の後ろにいる刹那が問題なのだ。
笑顔の裏で冷や汗を掻きながら、そろそろ、刹那がどうしてここまで不機嫌なのかが分かってきた……と、嘆息する。だが、もしもあっていたら……それはそれで、自分が不幸すぎる気もする。とばっちり、ではないか。
とにかく、それが正しいとすれば刹那の機嫌を戻す方法は一つ。
「じゃ……じゃあ、僕は他の所にも行かないといけないんで…」
勿論、嘘である。配達は刹那の家、ここで終わりだ。
当然ながらそんなことは知らないアレルヤは、そう、と少し残念そうな表情を浮かべた。
他意はないのだろうが……その後すぐに、室内温度が一度は下がっている事には、出来れば気付いて欲しい。刹那の機嫌がどんどんと急降下していく事にも。天然っぽいので、それは無理な相談かも知れないが。
「それじゃあ、またね」
「あ……はい。それじゃ…」
「……ピザを届けてくれたことには礼を言う」
バタン。
刹那によって、刹那の言葉と共に閉じられたドアを見つつ、再び溜息を吐く。
「まさか……刹那が嫉妬するなんて」
しかも、少し話しただけで。
意外な一面が見れたことは良かった、と素直に思えるのだが。
どうしても、自分のせいでもないのにあの視線、あの空気にさらされてしまったことが……ちょっとばかり、納得できなかった。
それでも、礼を言ってから閉めるところ、やっぱり刹那だなぁと沙慈は苦笑を浮かべた。
沙慈とアレルヤ初対面編…みたいな。
ティエリアとかだったらどういう感じになったんだろう…?