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「あ、扉」
「……は?」

 一瞬、ハレルヤは片割れが何を言っているのか分からなかった。
 今は自分よりもかなり小さい身長になっているアレルヤを見下ろして、困惑気味の視線を向けてしまったのは決して間違った行動ではなかっただろう。

 最も、アレルヤにはそんな自分の態度も気にはならなかったらしい。
 ただただ一点を見つめ、そちらへと指を向けた。

「ほら、あそこ」
「…見えねぇけど」
「え?俺には見えるぜ」
「僕も見える、けど…」
「ミレイナには全然ですぅ…」

 三対二。どうやら、その扉は確かにあるらしい。
 だが、人形たちに見えてどうして自分には見えないのだろうかと、ハレルヤは首を傾げた。いくら人形たちが普通とは違う能力を持っていたとしても、決してそれは自分を凌駕するような物ではないはずなのだが。

 結局は調子が出なかったのだろうと結論づけて、アレルヤが向かう方向へと足を向けた。よくよく考えれば、どうせ出方は煎り方その他諸々何も分からないこの場所なのだ、何らかの目印あるいは目標があっても迷惑にはならない。
 願ったりかなったり、とも言う。

「問題は、あの扉がどこへと繋がっているかなんだけれど」
「これで『庵』だったら笑えねぇ」
「同感。こんな場所にそれを作れたヒトが歴代の中にいたわけもないし」
「出口って事で?」
「分からないけど、出るためのヒントくらいはあって欲しいかな」

 その言葉に、ハレルヤは思わず呆れた。
 欲しいかな、とは片割れらしい言葉だが。

「こんな時くらい断言してみろよ」
「嫌だ。だって分かんないんだから仕方ないじゃないか」
「お前な……ところで」
「…?」
「扉、どんくらい近くなってる?」

 その問いに、アレルヤは微かに眉を寄せた。
 しかし、それでも直ぐに元の表情に戻ってこちらとあちら、らしい方向を見比べて、もう肉眼でも普通の人ビトなら見えるくらい、と言った。

 間違いではないだろう。嘘を言うような理由が見つからない。
 ということは、つまり。

「その扉は俺たちには見えないって事か……」
「…だね」

 ハレルヤには、未だに扉の影も形も捉えることが出来ていなかったのである。
 妙な話だった、最初から。人形たちには見えて、自分には見えないという。それが一体どういう事かと、もう少しくらい考えてみれば容易に分かることではあった。

 ガシガシと頭を掻いて、息を吐く。
 こういう事があるとは思っていた。そもそも自分たちでは得意としている分野が違うのだから。同時に、属している部分も違うのだから。けれど実際に目の当たりにすると、どこか悔しく思うのは仕方がないと諦めて欲しい。

「その扉から変な感じはねぇな」
「無いよ。あったら案内なんてしない」
「だろーな」

 この片割れに、他人を危険に巻き込むような真似が出来るわけがないのだ。

 

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