式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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皆様も風邪にはご注意ください。
朝から妙だとは思っていたのだ。声をかければ返事はあるが、問いをかければ応答はどこか的外れ。一回二回ならば「そういうこともあるだろう」と済ますことも可能であろうが、それが五回六回挙げ句に七回と、しかも連続して起こってしまえば、とてもとてもそんな言葉で済ますことは出来ないだろう。
他にも弁当の具は落とすわ箸は落とすわで、そもそも彼にしては珍しいことに弁当が弁当の態を取っていなかった。その上、彼はそんな事実にさえ気がついていないようだったのである。
由々しき事態だった。
どうしてこんな日に限って自分しかいないのだろう。一人は部活の合宿とやらでこの寒い中に極寒の地に行くとか言っていたし、一人は実家がごたごたしているから帰らないといけないのだということだったし、一人はバイト先のサーカスの特別講演とやらがあるとかで特別に休ませてもらっているし。
故に。
今学校にいる『いつのもメンバー』というのはウイングとデスサイズだけなのである。
まぁ、だから困ることがあるかというとそうではない。対応をするのが自分一人であること、ただそれだけが違うだけなのだ。もっとも、二人以上いたほうが楽だったというのは否定できない事実ではあるのだが。
「……」
そんな感じで五時間目中盤。
そろそろ、彼は限界であるようだった。
無理をするのが得意であるという、こちらからするととんでもなくありがたくない特技を持っている彼だったから、体調不良をクラスメイトには気付かせていない。よくそこまで我慢が出来ると思いながら放置していたのは、ちょっとした諸事情から。
しかし、そんなことを言っている場合ではなくなってきたのも事実だった。彼が自分から調子が悪いと今日この日は絶対に言おうとしないだろうし、そうすると少しもしないうちに意識を失って倒れてくれることだろう。
…全く、世話の焼ける。
はぁ、と息を吐いて、それからおもむろに、ウイングは黒板前に立っているトールギスⅢに言った。
「トールギスⅢ、デスサイズの調子が悪いようだから連れて帰る」
「あぁ、早く連れて帰れ」
あっさりと、トールギスⅢは頷いた。どうやら彼は気付いていたらしい。それでも言い出さなかったのは言っても無駄だと思ったからか。
などと考えてみても、そんな疑問はこの際ハッキリ言うとどうだって良い。とにかく連れて帰る許可さえ得ることが出来たのならそれで良いのである。
だが、異論を唱える人物も一人ほど、当然ながらいるわけであって。
「…何でそーゆー方向に話進めてんだよ」
無理をしている張本人、デスサイズである。
彼はもう表面を取り繕うのを止めたらしかった。ウイングとトールギスⅢがこうも大々的にばらしてしまえば隠す理由もないと思ったのだろう。それでも隠そうとし続けるという選択肢もないことはなかっただろうが、恐らく、今までの経験上知っているのだろう。こう言うときは自分たちの言の方が信じられることくらい。
そこは彼の日頃の行いのせいなので、特に同情も何もしないが。
…それにしても、随分と調子が悪いようだ。頬は熱のせいか赤いし、ぐったりと椅子に体重を預けてしまっているようだし。
これはとっとと高度下方が良いだろうと判断して、ウイングは立ち上がってデスサイズの席まで寄っていった。それから、何かを言おうとした彼に何を言わせるまもなく、ひょいと病人を抱き上げる。
それから改めてデスサイズに宣告。
「帰るぞ」
「…」
「帰るからな…。…トールギスⅢ、後の諸々は全て任せる」
「良いから早く帰って寝かしつけろ」
「分かった」
トールギスⅢに頷いて見せてから、不満いっぱいの表情を浮かべているデスサイズを抱き上げたまま、ウイングは廊下に出た。
それからしばらく歩いて、それでも不機嫌そうな顔の彼に、ため息を吐きながらちらと視線を向ける。もっとも、抱き上げ方が抱き上げ方だったので、彼の顔はあまり見えないのだけれども。
「…そんなに六時間目が楽しみだったか」
「ん」
「……ふて腐れるな。機嫌直しに抱き方を横抱きにしてやろうか?」
横抱き。俗に言うお姫様だっこというヤツだが。
そう言われた後、デスサイズは少し黙って、それから吹き出した。
「……………お前、今すっごい嫌なヤツ。機嫌直んないだろそれ」
「むしろ急降下か」
「分かってんなら言うんじゃないっての」
「それもそうかもしれないな」
「どう考えてもそうだろ」
そんな会話をしながらウイングは廊下を歩き、デスサイズは大人しく運ばれていた。
六時間目が何だったのかはご想像にお任せです。
他にも弁当の具は落とすわ箸は落とすわで、そもそも彼にしては珍しいことに弁当が弁当の態を取っていなかった。その上、彼はそんな事実にさえ気がついていないようだったのである。
由々しき事態だった。
どうしてこんな日に限って自分しかいないのだろう。一人は部活の合宿とやらでこの寒い中に極寒の地に行くとか言っていたし、一人は実家がごたごたしているから帰らないといけないのだということだったし、一人はバイト先のサーカスの特別講演とやらがあるとかで特別に休ませてもらっているし。
故に。
今学校にいる『いつのもメンバー』というのはウイングとデスサイズだけなのである。
まぁ、だから困ることがあるかというとそうではない。対応をするのが自分一人であること、ただそれだけが違うだけなのだ。もっとも、二人以上いたほうが楽だったというのは否定できない事実ではあるのだが。
「……」
そんな感じで五時間目中盤。
そろそろ、彼は限界であるようだった。
無理をするのが得意であるという、こちらからするととんでもなくありがたくない特技を持っている彼だったから、体調不良をクラスメイトには気付かせていない。よくそこまで我慢が出来ると思いながら放置していたのは、ちょっとした諸事情から。
しかし、そんなことを言っている場合ではなくなってきたのも事実だった。彼が自分から調子が悪いと今日この日は絶対に言おうとしないだろうし、そうすると少しもしないうちに意識を失って倒れてくれることだろう。
…全く、世話の焼ける。
はぁ、と息を吐いて、それからおもむろに、ウイングは黒板前に立っているトールギスⅢに言った。
「トールギスⅢ、デスサイズの調子が悪いようだから連れて帰る」
「あぁ、早く連れて帰れ」
あっさりと、トールギスⅢは頷いた。どうやら彼は気付いていたらしい。それでも言い出さなかったのは言っても無駄だと思ったからか。
などと考えてみても、そんな疑問はこの際ハッキリ言うとどうだって良い。とにかく連れて帰る許可さえ得ることが出来たのならそれで良いのである。
だが、異論を唱える人物も一人ほど、当然ながらいるわけであって。
「…何でそーゆー方向に話進めてんだよ」
無理をしている張本人、デスサイズである。
彼はもう表面を取り繕うのを止めたらしかった。ウイングとトールギスⅢがこうも大々的にばらしてしまえば隠す理由もないと思ったのだろう。それでも隠そうとし続けるという選択肢もないことはなかっただろうが、恐らく、今までの経験上知っているのだろう。こう言うときは自分たちの言の方が信じられることくらい。
そこは彼の日頃の行いのせいなので、特に同情も何もしないが。
…それにしても、随分と調子が悪いようだ。頬は熱のせいか赤いし、ぐったりと椅子に体重を預けてしまっているようだし。
これはとっとと高度下方が良いだろうと判断して、ウイングは立ち上がってデスサイズの席まで寄っていった。それから、何かを言おうとした彼に何を言わせるまもなく、ひょいと病人を抱き上げる。
それから改めてデスサイズに宣告。
「帰るぞ」
「…」
「帰るからな…。…トールギスⅢ、後の諸々は全て任せる」
「良いから早く帰って寝かしつけろ」
「分かった」
トールギスⅢに頷いて見せてから、不満いっぱいの表情を浮かべているデスサイズを抱き上げたまま、ウイングは廊下に出た。
それからしばらく歩いて、それでも不機嫌そうな顔の彼に、ため息を吐きながらちらと視線を向ける。もっとも、抱き上げ方が抱き上げ方だったので、彼の顔はあまり見えないのだけれども。
「…そんなに六時間目が楽しみだったか」
「ん」
「……ふて腐れるな。機嫌直しに抱き方を横抱きにしてやろうか?」
横抱き。俗に言うお姫様だっこというヤツだが。
そう言われた後、デスサイズは少し黙って、それから吹き出した。
「……………お前、今すっごい嫌なヤツ。機嫌直んないだろそれ」
「むしろ急降下か」
「分かってんなら言うんじゃないっての」
「それもそうかもしれないな」
「どう考えてもそうだろ」
そんな会話をしながらウイングは廊下を歩き、デスサイズは大人しく運ばれていた。
六時間目が何だったのかはご想像にお任せです。
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