type5 06：古びた教会

三人旅に戻って。
……何だか展開が急な気がするのは、きっと気のせいじゃない。

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06：古びた教会にて

 

 

 

　それは、突然目の前に現れた。

「……何だこれ」

「さぁ……何だろうなコレ」

「何物かはさておいて、何故かような物がここにあるのだ？」

　森を切り開いて作ったのであろうその妙な建物を三人揃って呆然と見上げ、立ち止まる。

　正直なところ……これは気にせず素通りして去るべきなのか、こそりと中をのぞくべきなのか、政宗には全く判然としなかった。私的には見なかった事にして立ち去る方が良いと思うのだけれど、しかし、多分、まだここは伊達領だ。

　何か怪しい物があるのなら、ちゃんと見ておかなければならないだろう。

　それに……怖いもの見たさ、という言葉があるように。

　ほんのちょっと、興味だってある。

　興味と理性とを天秤にかけて、じぃ、とそれを眺める自分の隣で、元親が首を傾げながら口を開いた。

「っつーかよ……何かこれ、ザビーん家に似てねぇ？」

「……言われてみれば。ザビー様の居城はもっと素晴らしい物だが」

「……………………………テメェまだザビー教と手ェ切ってねぇのかよ」

「ザビー様は素晴らしいお方ぞ。まぁ、貴様の様な馬鹿には到底分かり得ぬのであろうが」

「んだと！？」

「やはり貴様に分かるわけなど無いか。日輪と比べて百億と負の一を掛けた程に素晴らしいザビー様の素晴らしい素晴らしさを理解できぬとは、憐れな事よ」

「あぁ！？てめ……？…ん…？」

　どこまでも上から目線の元就の言葉に元親が反発しかけた所で……何か引っかかりを覚えたらしい。叫び返そうとした勢いが徐々に萎んでいった。

　完全に勢いが死んだところで、鬼はどうしてだか恐る恐る尋ねた。

「……お前それ、ザビーの事貶してね？」

「しかも『素晴らしい』に心がこもってねぇよな」

　彼の言葉に追従して、政宗もこくこくと頷く。

　なんと言うか、彼を誉めるための言葉が思いつかないから仕方なく『素晴らしい』を何回も使っているような感じがする。多分気のせいではない。元親も言った、先ほどの掛け算が良い証拠だ。あれでは負の数になってしまう。

　素晴らしい、どこの話ではない。

　むしろ最悪とか、そういう部類だろう。

　一体どうしてそんな相手の開いた宗教に今だ入ったままなのだろうとか疑問を覚えながら、サンデー状態に入ってしまった元就を見やった。

「……とにかく、似てるんだよな？」

「うむ。今でも月一で通っておるから間違えなどせぬ」

「元就よぉ……月一って、結構前は毎日じゃなかったか？」

「旅費がかかるのだ」

「そう言って、その後は週一だったハズじゃ」

「面倒になってな」

「お前もうサンデー毛利でも何でもねぇだろ！？」

「失礼な。我は紛う事無くザビー教の……役職は何だったか覚えておるか、政宗」

「いや、俺より元親に訊けよ」

　月一とか週一とか知ってるのだから、そういう事だってある程度は抑えているだろう。

「で、元親、お前知ってんのか？」

「そこまでは覚えてねぇ。多分、何回か聞かされたんだろうけどよぉ……思いっきり聞き流してた気がする」

「……だろーな」

　その気持ちは良く分かった。

　しかしやはりと言うべきか、元就はそうは思わなかったようであり。

　不機嫌丸出しの表情で、元親に冷たい視線を送った。

「馬鹿鬼」

「馬鹿とか言ってんなよ。馬鹿っつー方が馬鹿なんだぜ」

「幼稚な事を……」

「んだとコラァ！」

「ふん……まぁ良い。それよりも、我の言葉を聞き逃しておったと言うのは本当か？」

「そりゃそうだろうよ。だってテメェ、話しだしたらひたすら太陽の話しかしねぇし。途中でザビー教の話されても仕方ねぇっつーか」

「ならば貴様は討ち首の刑ぞ」

「何で！？」

「我の事を無視した者は、基本的に死罪ぞ」

「我儘過ぎるだろ！」

　……なんていう、瀬戸内組の会話を聞きながら政宗は思う。

　彼らの会話の何もかもを記録できる媒体が欲しい、なんて。

　何と言うか……彼らの会話は聞いてて実に面白いのである。

 

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うちのナリ様は、ザビーの事けっこう貶してますよね。さりげなくに見せかけて、わりと大々的に。