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というわけで、下。ラストです。
「……まさか、お昼ごはんを食べてその後デザートを食べて少し喋るだけで夕方になってしまうとはね……想像外だったわ。ファミレスの店員さんには悪いことしたわね。きっと、居座る私たちが邪魔で鬱陶しいと思っていたんじゃないかしら」
「気にやまなくても良いと思いますよ?長時間居座るにしても昼食にデザート付だったんですからまだマシだと思いますし」
「そんなものなのかしら」
「そんなものですよ」
……と、いうわけで。
現在地は、帰り道。
春奈と並んで朝よりも賑やかになっている気がする池袋の街を歩く。
そこらかしこに愛しい人間たちがいるのを眺めながら、一番最初に自分がいた公園へと、二人で並んでのんびりと歩く。あの場所に辿りついたら別れて家に返ろうと、ファミレスから出る時に二人で決めていた。
だから、のんびりと歩く。
家が違うのだから別れるのは当然にしても、別れるのを少しでも遅くしたい。
何故なら自分たちは『親子』なのだから。
一緒にいたいと思うのは、おそらく普通のことだろう。
「あぁ、でも、」
ふっと、思う事があって、言葉を零す。
「少し残念だわ」
「何がですか?」
「折角二人だったのだから、一緒に人間を愛するのも良かったかしらと思って」
「それは……確かに残念ですね。そうしたらきっと、とても満足できたのに」
「えぇ、残念ね。でも……こういう日も良いものなのかもしれないわ」
「こういう日?」
首を傾げる子に、微笑み、答える。
「自分の『子供』と一緒に、何をするでもなく過ごす日よ」
「それは、人を愛する事よりも素敵ですか?」
そうして返ってきたのは問いで、しかも妙に答えづらい物だった。
「難しい事を聞くわね……」
「冗談ですよ、母さん」
思わずうなると、彼女は楽しそうに笑った。
からかわれたのだと気付き、やれやれと苦笑する。
「『子供』のくせに生意気よ」
「ごめんなさい。でも、実際どうですか?」
「どっちもどっち、とだけ答えておきましょう」
「……逃げてますね?」
「逃げてるわ。答えられないもの、そんな質問」
妖刀としても、母としても。
答えられるわけが無い。
軽く肩を竦め、そして、罪歌は立ち止まった。
目の前にあるのは、あの公園。
「そろそろお別れね。名残惜しいけれど」
「そうですね……名残惜しい、ですね」
「じゃあ、また会いましょう」
「また会いましょう」
「今日みたいに一緒に、休みの日を過ごしましょう」
「はい。とても楽しみです」
「では、さようなら」
「さようなら」
そうして二人は互いに背を向けあった。
名残惜しくは、あったけれども。
~おまけ~
「……罪歌?何をやってるの?」
「あぁ、お帰りなさい、杏里」
台所で包丁を手に持ったまま宿主である彼女を出迎えると、彼女は何故だかとても呆れた様な表情を浮かべた。
「……包丁を持っている手を、こっちに向けないでほしいんだけど」
「あら、私としたことが。うっかりしてたわ」
慌てることなく包丁を自身の方に引き戻し、改めて、まな板の上のジャガイモに向き直る。あとは、これを切れば良いのだ。ニンジンも、タマネギも、肉も、それ以外はすべて準備してあるから。
素早く一秒で相手を十二等分くらいにして、杏里の方へ向き直る。
「で、どうかした?」
「いや……何で、罪歌が料理してるのかなって思って」
「あぁ、いや、大したことじゃないの。次は、母親の手料理をふるまうべきかと思ってね」
「……?」
「気にしないでいいわ」
不思議そうな表情のままの宿主に、罪歌は静かに微笑んで見せた。
ちょっと見た感じ、おかしさを覚える親子のお話、完結。
次は手料理と罪歌と贄川さんを出せたら幸せかもしれない。
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