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というわけで、続。凪のところに行きましたよという話。



「で、凪。一体どうしてこんな物を読もうと思ったのですか?」
「えぇと、ね」
 凪と雲雀の部屋にて。
 本を読む努力を放棄していなかった凪を本ごと抱き上げ、つい先ほど部屋の中に入った骸は娘と視線を合わせる様にして尋ねてみた。
 それは、この部屋に来る前、雲雀に凪が厚く英語で書かれた本を持って行ったと告げられた時から気になっていた事で。彼女だって幼いながらに一目見てこれは読めないと分かっただろうに、それでも持って行った理由は何なのだろうという自分と雲雀が共通して所有している疑問である。
 アルファベットが呪文の様に並んでいるその本を開いたまま抱きかかえ、幼い娘は真っ直ぐにこちらを見上げて口を開いた。
「おとうさんが、よんでるほんだから。だから、おとうさんは、どんなほんをよんでるのかな、って、おもって」
「それで……読めないと思った本を読もうと思ったんですか?」
「うん」
 恐る恐る尋ねると、凪はこくりと頷いた。
 その、素直で子供らしい、愛らしい姿に、思わず骸は娘を抱く腕に力を込めた。決して自分を嫌っているのではないと分かってはいるけれど、それでも本気で言葉の中にとげを潜ませてぶつけてくる階下の息子だと思っている彼の言葉に打たれた後だと、本当に彼女のこの無防備さは癒しだった。もっとも、こちらへ向かう前の雲雀の「戻っておいで」という内容の言葉によって既に癒されずみではあるのだが。
 癒しは、いくらあっても多すぎるという事は無いのである。
 それからしばらく凪を力いっぱい抱きしめて、ようやく気が済んだ骸は少し腕から力を抜いて、それから彼女に微笑みかけた。
「無い様が気になるというのなら、私が後で和訳して読み聞かせてあげますよ」
「ほんとう?」
「えぇ、本当です。凪に対して嘘を吐くなんてとんでもないこと、とてもじゃないですが私にはできません」
「そっか……ありがとう、おとうさん」
「どういたしまして、凪」
 はにかむ凪の頭を軽く撫でて、骸も微笑んだ。
「さて、下で恭弥が待っています。早く戻ってあげましょう」






今日も六道家は平和です…って、前にも言ったか。
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