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シリアスを目指してみた。
自分を表す言葉に『喧嘩人形』というのがあるのは、知っている。
まさに自分をそのまま表したような言葉に、初めて聞いた時は苦笑しか浮かんでこなかったくらいだった。それにしても、人形、とは。
それでも、そう言われていても自分はれっきとした人間だ。
試した事は無いけれど……首を絞めたり水の中に顔をつっこんだりすれば、苦しいに違いない。火に触れる機会があったら、触れた場所は火傷を負うだろう。最近はあまり折っていない気がする骨も、折れるときは折れる。そして、薄皮一枚であろうと切られれば痛いし、血は流れるのだ。
だから、珍しくこそあれ、こうして追いつめられて危機的状況に陥っている事は、全く不思議な事柄ではないのだった。そういうことは起こる時は起きて、そしてそれが今であったという、それだけの話。
もちろん現状について、悔しくはあるし焦りもしているし苦々しくも思うし歯がゆくも思う。手が動くのならば目の前の相手を容赦なく殴りつけるだろうし、足が動くのならば蹴りつけるだろう。……いや、その前に立ち上がりたい。
大変不本意な話なのだが、今、自分は力なく建物の外壁にもたれかかって座り込んでいるのだ。
薬を使われたわけではないのだろう。いや、そう思っているのは自分だけで、もしかしたら使われているのかもしれない。少なくとも、使う機会ならいくらでもあったに違いなかった。自身に刻まれた傷の多さからみて、それは確認するまでもない。
ただ、どちらにしたって関係ないのだ。動けない理由は別にあるのだから。
少しずつぼやけていく視界の中、『理由』は酷く鮮やかに、その存在を示す。
赤く、紅く。点々と自分が辿った道を表すように存在するそれ。
血。
血である。
つまり、少々なら大丈夫だろうと血を流したまま放っていて、気がつけば切り傷は増え血が流れすぎて足元も覚束なくなっていたのだ。
しくじったと、現状で言える事はただそれだけ。確かに今日という日、自分は調子があまり出なかった。なのに争った相手は無駄に絶好調だった。けれども、そんな言い訳をしたところで意味なんて無い。
負けたら終わり。ただそれだけ。
まぁ、だからといって大人しく刃を受け入れる気なんて全くないのだけれど。たとえ指先しか動かない状況でも、力を振り絞れば頭突きくらいは可能だろう。それが上手くきまって相手がダウンしてくれればもうけものである。
そんなことを考え……違和感を感じ、はたと気づく。
おかしかった。だってここに来て、ここまで追い詰められて、それから一体どれほど時間が経っただろう?人の目を気にする事のない路地裏の奥の奥で、間違っても人が訪れないような深夜で、何かを実行するにしても躊躇いなど無いはずなのに。
どうして刃を突きつけられるわけでも蹴りつけられるわけでもないのかと、確認のためにふらつく頭をゆっくりと上げる。
「…何で」
そうして目に映った相手は、心底不思議そうな表情を浮かべていた。
浮かべて、何でなのか分からないと、ふっと疑問に思ったと言わんばかりに。
口を開く。
「何で、シズちゃんの血は赤いんだろう」
「……とうとう頭湧いたか」
このノミ蟲が、と。
呟くように呻くが、そんなものを意に留める気もないと言うように、臨也は言を続ける。
「だっておかしくない?人ならぬ化け物の血が赤いなんて。化け物は化け物らしく黒とか青とか緑とか、赤じゃない血を流すべきだと思うんだよね」
「黒や青だァ……?もう人間じゃねーだろ…それ」
少しずつ暗くなっていく視界をどうにかしようと、応えながらも頭を振ると眩暈がさらに酷くなった。…頭を動かすのは止めた方がいいらしい。
それに、意識も本格的にまずくなってきた。このままでいたら、大嫌いな相手の前で意識を手放すことになってしまうし、実際なってしまうのだろう。そうして生殺与奪権を相手に渡してしまう事になるのだ。
現状に口惜しさを覚えていると、そんなことはお構いなしに臨也は言う。
「ねぇ、何でシズちゃんの血は赤いの」
知るか、と言おうと思った。
「ねぇ、どうして?」
だが、その前に臨也は再び問いかけてくる。
「どうして?ねぇ、どうしてなのシズちゃん。何で君の血は赤いままなのさ」
「…うるせぇ」
小さく。
けれど絶対的に目の前の相手の言葉に応じ、口を開く。
「 」
しかし、一体何と言ったのか自分自身でも判然としないまま。
そのまま、意識は黒に塗りつぶされた。
そして思わず連作に。
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