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来神時代の臨也さんと静雄さんのお話。限りなくギャグなのかもしれない。
「しっずちゃーん!これ食べて!」
「いらねぇ」
即答。
そんなにべもない言葉に思わず、む、とした臨也は、その表情のまま差し出した物を、グリグリと静雄の頬に押し付けた。
「つれない事言わないでさ、ちょっとくらい考えてくれても良いんじゃない?んー?」
「っせぇな!手前の手からもらったモンを口に入れれるわけがねぇだろ!つーか手ぇ止めろ!グリグリすんな!」
腕と腕がぶつかりばしんと音がする前にするりと距離を取って、不機嫌さ丸出しのまま臨也は手に持っていた桃色の飴玉を元あった袋の中に戻した。本当は口に放りこもうかと思ったのだけれど、それは怖かったので、直前で中止。
そして代わりにうまい棒(開封済み)を取り出して、差し出す。
「じゃあこれ」
「……手前、俺の話聞いてやがったか?」
「あれ?不評?」
「不評以前の問題だ!」
「じゃあこれ!五円チョコ!」
「何差し出されても受け取らねぇからな!」
「えー?無料でお菓子が手に入るチャンスなのに勿体ない」
「手前の無料ほど怖ぇ物はねぇんだよ」
何が起こるか分かったものではないと、警戒心もあらわに自信を見羅見つける喧嘩人形を見やり、臨也は肩を竦めて五円チョコを袋の中に戻した。
そして再び、別の菓子を取り出す。
「ならさ、これはどうかな……?」
それはプリンだった。
しかも超高級洋菓子店の完全予約制の個数限定販売な上に期間限定品な新製品である。
それはある意味、今回の作戦の最終兵器であると言えた。
もちろん、超高級、だなんて物に静雄が興味を持っているとは考えにくい。だからそれとなく、つい昨日、これの存在を彼に伝えておいた。その時の目のキラキラ具合を思い出す限りにおいて、甘い物が好きな彼が食いついてこない理由が見当たらない。
しかし、不思議と静雄は冷静だった。
冷静に、距離を保ったまま、じぃとこちらの出方を窺っている。
ほんの少し、意外。
「あれ?シズちゃん甘い物とか好きじゃなかったっけ」
「手前が持ってる時点で、それは既にミサイル兵器を超えた存在なんだよ」
口惜しそうにこちらを見やる喧嘩人形はそう言った。
その言葉に、そこまで警戒されている事に対して光栄だと言うべきなのか、それとも警戒し過ぎだと呆れかえるべきなのか、僅かに迷う。いや、まぁ、警戒されて当然の事を今までしてきたわけだし、このプリンも確かに危険物ではあるのだが。
結局、嘆かわしげに息を吐いて、微妙に寂しげな視線を足元に落とすにとどめた。
「酷いな……折角、シズちゃんに食べてもらいたくて注文したのに」
「……」
全て演技だが、それを完全に見抜ける事のない静雄にとっては結構精神的に痛いらしい。
罪悪感に苛まれているであろう喧嘩人形に気付かれないようにほくそ笑んで、臨也は、トドメとばかりに空いている左手で目元をぬぐった。
「うん……分かったよ。シズちゃんに信頼されなくなったのは全部俺のせいだしね。今更こんなことしたって、許してもらえるなんて甘い考え方だよね……」
「……臨也」
「なに、かな……?」
その声音にあとちょっとで落ちると心中で嗤いながら、表情は落ち込み気味なものを浮かべたままに首を傾げる。
「もしかして、視界に入るのも嫌?なら、今すぐ帰るけど、」
「一つ……訊かせろ」
確信した。この問いに答えれば彼は術中にはまってこれを食べる。
そうすれば、このプリンに沁み込んでいる無味無臭の薬物が彼の体内に入り、その効果が発揮されるだろう。そうなればこっちのもの。今日で決着を付けてあげるよと心の中で高く笑い上げた。
そして。
「何で、そのフタが開いてんだ?」
「……え?」
「飴玉はともかく、さっきの五円チョコもうまい棒も開いてたけど、あれ、何でだ?」
「それは……その」
まさか、そんな根本的なところに今ツッコミを入れられるとは。
……入れるんならうまい棒を差し出された時に入れてくれ。その時なら心構えもしっかりあったのに。
心の中の高笑いが萎んで行くのを感じながら、不思議そうな顔の静雄が納得しそうな理由を考え込んでいる間に。
返答を待ちきれなくなった静雄がとっとと帰宅してしまった事に臨也が気付くのは、あと何時間か後の事。
まぁ、臨也さんならすぐさま言い訳くらいなら思いつきそうですが。
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