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デュラ。幼少期のお話です。



 足元から伸びる影が長く、細くなる頃。
 自分は、そこにいた。
 どうしてこんな場所にいるのか何て分からない。本来なら家に帰るべき時間帯だろうが、不思議と今日は帰りたくなかったのだ。だから家から離れる様な道を選んで、ふらり、ふらりと彷徨い歩いた。その結果として今、自分はここにいる。行く当てもなく進み続けてきたのだから、この場所が分からないのも当たり前といえば当たり前。
 そんな事を思いながら、とりあえず歩き付かれた体を休めようかと、目の前に存在していた公園へと足を踏み入れた。
 昼間なら小さな子供が駆けまわっているだろう砂地の広場には誰もおらず、保護者たちが座って世間話に花を咲かせているであろうベンチは無人だった。無風の中でブランコはゆらりともせず、滑り台は夕陽を浴びてその光を反射させていた。ジャングルジムの影は不思議な模様を地面に描き、視線を巡らせて見れば、砂場には忘れ去られたバケツが所在なさげに放られていた。
 騒々しいだけの空間かと足を遠ざけていた場所だけに、この閑散とした空気は随分と似つかわしくないように思えた。けれども、こんな静けさに満ちた場所ならば、たまには訪れても良いかもしれない。
 足を休めるべく入った誰もいない公園の中を当初の目的も忘れて歩き回るうち、ふと、この場所が無人ではない事に気がついた。
 公園の中央に位置する、オブジェの様な遊具の上。
 その子供は両膝を抱えて座っていたのだ。
 こんな時間に何をしているのかと、自分の事を棚に上げて首を傾げる。家に帰りたくないのだろうか。家に帰れないのだろうか。それとも、家が無いのだろうか。
 考えてみても答えなど出るわけもない。
 答えの出ない問いにしびれを切らし、遊具の下から遊具の上に声を投げた。
「ねぇ、そこに座ってるお一人さん」
「……何だよ」
「どうしてそんな所にいるの?」
「……」
 返ってきた声に尋ねかければ、今度返ってきたのは沈黙だった。
 それっきり黙ってしまった子供を見上げ、目を細める。口を閉ざした子供は、まるで物言わぬオブジェの一部であるかのようだった。そのくせ全身で叫んでいるのだからタチが悪いと思う。寂しい寂しいと、何も言わない癖に泣き続けるのは卑怯だ。寂しいのなら喉を震わせて叫べばいいだけの事なのに、それすらもせずに寂しいのだと告げる行為は見ていてつまらない。それでいて、妙に愛おしい。それも人の形なのだと思うと、全てが許せるような気がするから不思議だ。
 それが自分の常。
 しかし、今日は違う。
 子供を見ていると苛々する。腹立たしい。これが怒りと言うものなのか、それを感じた事が殆ど無い自分には分からないけれど、ただ一つ分かっている事は、この子供がこんな姿を自分に見せる事が許せないと言う事、それだけだった。
「そこの君」
 返答がないと知りながら、呼びかける。
「君は、それで良いの?」
 誰にも何も告げず、寂しいと叫ぶだけで良いのか。
 そこで口を閉ざしたまま無機物と一体となってしまっても良いのか。
 手を伸ばさなくても良いのか。
 静かに、問うた。
「……でも、」
 すると、か細い子供の声が降ってきた。
 泣きそうな声だと思いながら、語るままに語らせようと何も言わずに子供を見る。
「俺が近づくと、みんな怪我する」
「他人なんて気にする必要無いよ。したいようにすればいい。それが人間なんだから」
「それじゃ、だめなんだ。俺は、化け物なんだから」
 したいようにしたら他人を壊してしまう。
 そう言って、くしゃりと顔を歪め、頬に幾つも筋を作りながら子供は自分を見下ろした。
「俺は、人の様に人に触れられない。怖いから。壊してしまうのが、怖いから」
「だから一人を選びたいの?」
「多分、そうだと思う」
「そっか。なら、泣かないでよ」
 その言葉にきょとんとした表情を浮かべた子供は、ようやく目から零れるそれに気がついたらしい。慌ててごしごしと腕で目を擦った。
 赤くなってしまいそうだと思いながらもそれに関しては何も口を挟まず、自分は、別の事を告げた。
「泣くのはそれが嫌だからでしょう。まだ諦めたくないんでしょう。だったら諦めずに手を伸ばせばいい。諦めきれるまで人を壊し続ければいい。そうやっていって、もう嫌だと思ったら手を伸ばすのを止めたらいいよ。自分のために人を壊せばいいんだ」
「そんなこと、」
「出来るよ。出来るに決まってる。だって、君は誰が何と言おうと人間なんだから」
 残酷で歪んでいて自己中心的で、傲慢な事この上ない、自分が愛する人間たち。
「そう。君は、人間なんだから」
 その中の一人でありながら何かが違う子供の心に、言葉が沁み渡るようにと優しく言い聞かすと、子供は、泣きながらも嬉しそうに笑った。

 






小さな臨也と小さなシズちゃん。もしも昔あってたら。
きっと小さなころから臨也は人間が好きだったのだろうと思うし、きっと小さなころから静雄は人間が怖かったのだろうと思います。
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