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斜め四十五度な本当にあった怖い話。二番手はノワール。ノワールって、黒、って意味らしいですね。



 じゃあ、次お前な、と。
 いきなり次の話し手にされたノワールは眉を寄せた。
 そんな事を言われても困る。というか、自分に振られても困る。普通の怪談なら両手の指を使っても数え切れないほど知ってはいるものの、今回話す怖い話には『本当にあった』という言葉がくっつくのである。
 本当にあったのだと言われている怪談はいくつもある。しかし、それらが本当にあったのかを自分は知り得ない。そしておそらく、ララァくらいになったらそれを知り得る事が出来るだろう。仮に本当にあった事だと思って口にして、違うと言われたらその時が怖い。彼女らの反応が、ではなく、彼女に本当だと思っていた怪談を否定される事が。
 不思議の真実は闇の中に。
 曖昧なものは曖昧なまで。
 世の中には、知らない方が良い事があるのである。
 故に、話す怪談の選択は慎重にせざるを得なかった。
 否定されても大丈夫な、けれども全く面白くないわけでもない、出来るならば彼らが全然知っていない怪談。
 ……そんなものがあるのだろうか。
 唸りながら頭を抱えていると、デスサイズとスターゲイザー声がかかった。
「ノワール、そんな難しい顔して考え込む必要無いって。オレが言ったのみたいなのでも、一応問題は無いみたいだしさ。気楽にいったら?」
「そうですよ、ノワールさん。次も待っていることですし、何でもいいから一つ、言ってみてはいかがでしょう」
「……しかしな……」
 呻き、額に手をやって息を吐く。何でもいい、とは簡単に言ってくれるものだ。怪談話は幾つも候補があり過ぎて決まり切らないし、現実の話でも……とてつもなく怖かった事柄なんて、最近は無かったはずだ。
 どうすればいいのだろうと頭を抱えていると、ふいに、一つの記憶がよみがえってきた。
 ……怪談ではないが……あれは確かに恐怖体験だった。
 怪談の真否を判定されてしまうよりはマシだろう。そう思って、ノワールは一週間前の科学の時間の、あまり思い出したくない記憶を適当に辿りながら口を開いた。
「一週間前……ギャンの新作薬物十個の実験台にされた。立て続けに」
「あぁ、そう言えばそんな事もありましたか……」
「……あれは地獄だった」
 同じ経験をした者同士、互いに視線を交わして頷き合う。あの授業の内容は、あまり鮮明にも出だしたくない。思い出したら入る穴を自分で掘りたくなるくらい落ち込むであろう事は、殆ど間違いないのだから。
 そんな経験だ。これも、本当にあった怖い話、ということで良いだろう。







以上、ノワールの、本当にあった怖い話。
次はスターゲイザーですよ。
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