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それ・びーにおける、とあるお昼寝のお話。とりあえずセラヴィーにはお疲れさまと言っておこう。




 どうしてこうなってしまったのだろう。
 身動きの取れない己の現状を嘆きつつ、セラヴィーは背を若干丸めたまま、座ったままで窓の外に視線を転じた。
 透明なガラス越しに見える風景は、明るい光に満たされている。空には殆ど雲が無く、快晴と言っても差し支えない天気だと思えた。道を行きかう者は今のところ見当たらないが、きっとそのうち誰かが通るだろうし、いくらか前には誰かが通っているに違いない。こんな天気だ、家の中にいる事が耐えられない者は必ずいるだろう。
 だが、生憎と自分は違う。天気が良かろうと悪かろうと、用事もないのにわざわざ出かける様な事はしなかったに違いない。何故かと言えば簡単な話で、今日は全くそんな気分ではなかったからだ。
 そういうわけなのだから、今の状況だってそれほど鬱陶しく思う様な物ではないのかもしれない。出て行こうと思っていたわけではないのだから、邪魔されたと不機嫌になる事はないのかもしれない。
 しかし、出て行くつもりがあったとしても、無かったとしても。
 やはり、行動に制限が付くのは少々、気に入らない。
 はぁ、と息を吐いて、ひたすら窓の外を眺める。
 室内を見ていても良いのだが、それは少しばかり、飽きた。始めは何とはなしに眺めていたのだが、見えるのは同じものばかりで面白みがなかったのである。動きが制限されているという事は、つまり、視界に収めることが出来る景色も制限されているという事に他ならなかったのだ。
 そんな中、眺める対称に窓の外を選んだのは、現状において唯一、景色の中に目に見える変化がありそうな場所だったからだろう。
 通行人はいない。だが、風は吹くし、その事に寄って木々は揺れる。空を見れば雲が流れて行くのが分かるし、気が付けば太陽の位置も変わっている。見飽きる程見てしまった部屋の中よりは、外の景色の方が新しい発見もある。
 どうしようもない今と言う時間の中において、見続けられる光景がある、という事実だけが救いだった。
 けれども、そろそろ別の救いが来ても良い頃なのではないだろうか。
 例えば、そう。
 この場所に共に暮らしている別の仲間、だとか。
「……珍しい光景だな」
 果たして。
 背後から聞こえてきたのは、思っていたのとは違う声。
 それでも仲間の声に違いはなかったので、彼の呟きには返答を贈っておく事にする。
「余計な御世話だ、ダブルオー」
「不機嫌そうだな……どうかしたのか?」
「どうかしたも何も無い。この光景を見て分からないか?」
 心底不思議そうなダブルオーの声音にイラつきながらも問いかけると、彼は首を傾げた、ようだった。彼は背後にいるため顔は見えず分からないが、何となくそうなのではないかと思った。そして実際、その直感は正しいのだろう。
 沈黙が流れる事十秒程度。
「……分からないな」
 そんな言葉と共に、視界の端に彼の顔が現れる。
 首を回してダブルオーと視線を合わせ、息。
 彼の目は、今の彼の言葉が真実だと告げていた。
 そして、駄目押しだと言わんばかりに、彼は首を傾げた。
「何故だ?」
「……動けないだろう、これでは」
「誰かに手伝ってもらって、床に仰向けにすればよかったんじゃないか?」
「その『誰か』が全くいなかったんだが」
 ダブルオーはいつもの様にガンダムの所へガンダムの称号を奪いに行っていたし、デュナメスは散歩に行ってしまっていたし、ケルディムも同様だし、キュリオスは近所のコンビニへ菓子を買いに行ってしまっていた。
 故に。
 この場所にいたのは、身動きの取れない自分と、そんな自分の背中にもたれて眠っているアリオスと、そんなアリオスの腕の中でこれまたのんびりと寝息を立てているセラフィムだけだったのである。
 一体この状況で、どうやって誰に助けを求めろと言うのか。
 じと、とダブルオーを見ると、彼は、すい、と視線を明後日の方向へ向けてしまった。
 思わず半眼になりかけたが、どうにか堪えて、セラヴィーは背中の二人を指さし、口を開いた。
「ダブルオー、お前がさっき言った事をしてくれ」
「分かった……ところで一つ訊きたいんだが」
「何だ?」
 彼の手がアリオスの肩に触れたのを視認しながら、尋ねる。
 ダブルオーは寝入っている彼を床に仰向けにしながら、言った。
「どのくらいの時間、この状態でいたんだ?」
「……二、三時間くらいか」
「…………凄いな」







何となく書きたくなったお昼寝のお話は書けたので、次はセラフィムの事を「フィム」と呼ぶようなお話を書きたいです。いつ書けるかなぁ。
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