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お題第一号はトリニティとのお話です。
これで追悼とさせてください……
01.ゆびきり
突然現れて突然ここを訪れた彼らは、しかし突然帰ることはなく、しばらくトレミーの大きな休憩室でのんびりとしていた。
針のような視線に囲まれてなお、普通に過ごしているというある意味素晴らしい精神を見せながら、ただただ座ってのんびりと。
さっきまで自分たちに暴言をはいたり、勝手な行動をしたりと、そういう問題ばかりおこしていたとは思えないくらい、のんびり、穏やかに。
少し離れたところからぼうっと見ていると、長男のたしか……ヨハンと目があった。
慌ててそらすももう遅く、彼はこちらにやってきた。弟と妹も一緒に。
「お一人ですか?」
「あ、はい」
「なら、相席をしても」
「かまいませんけど……」
答えると、三人共が席に着く。
それから最初に口を開いたのはミハエルだった。
「なぁ、お前ってたしかアレルヤっていうんだよな」
「うん。アレルヤ・ハプティズム」
「ハプティ……言いにくくねぇか?」
「あ、それ私も思う!」
「そうかな?慣れればどうってことはないけれど」
話しながら、どうしていつも通り振る舞えているのかと、自分で驚く。
さっきミハエルに『不完全な改造人間』と言われて苛立ったばかりなのに。
何でだろう。
冷静に考えると彼の言うことは当っていて、腹を立てるのはお門違いだと分かったからだろうか。
それとも……
「トリニティも言いにくいんじゃないかな」
「ハプティズムの方が、絶対に言いにくいよっ!」
「だよなー。な、兄貴もそう思うだろ?」
「……どっちもどっちという考えは無いのか?」
「今はどっちかを決めてんの。だから無し」
「そうか……なら、ハプティズムの方だと思うが」
「よっしゃ!三対一だぜ!」
彼らの、とても仲の良い普通の兄弟、という姿を眺めていたから?
眺めていて、彼らも自分たちと変わらないと実感できたから?
それで、少し、彼らのことを知りたいと思ったから?
分からないけれど。
けど、
「いつの間に多数決になって!?」
「ついさっきだよ!私たちが決めたの。ね、ミハ兄?」
「そゆことだ」
「そうなったら、僕には勝ち目が無いじゃないか……」
「気のせい気のせい」
「……絶対違う」
この、話している時間はとても楽しいと思えるのは、間違いないから。
だから、ずっと続いたらいいのにと思う。
だけれど、それでも別れは来るもので。
「ミハエル、ネーナ。そろそろ帰るぞ」
「えー?私、もっと喋ってたいーっ」
「俺もー。時間、伸ばせねぇの?」
「無理だ。今でもギリギリなんだぞ」
「……分かったよ、兄貴」
かたん、と音を立てて三兄弟は立ち上がった。
少し、寂しいと思った。
「では、私たちはこれで」
「あ、はい。また……」
「そうだっ!」
突然、ネーナが右手の小指を差し出してきた。
「ゆびきりしよ?また会おうって」
「ネーナだけずりーぞ!やるなら俺も!」
さらにはミハエルの右小指も差し出されて。
クスクスと笑い、アレルヤは順番に二人の小指に自分の小指を絡めた。
そして、
「ヨハンさんもやりませんか?ゆびきり」
「では……やらしてもらいましょう」
ゆっくりと差し出された右手と同じように触れ合って。
「また、会いましょう」
本編沿い、初めて書いた気がするんですが……