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子供時代なトリニティのお話。初めからマイスターになる事を定められていた彼らの、行きぬきタイムの、終わったころのお話です。
18:背負う (00:ソレスタル・ビーイング)
偶に、外出が許可される事があった。
昼食後から六時間程度。限られた時間ではあったし、十分だと思えるほどの時間でもなかったが、それでも、その時間は自分たちにとってかけがえのない物だった。
大切な時間だったから思いきり楽しんだ。思いきり遊んだ。
そして、今。
楽しかった時間は終わり、自分たちは元の所へ戻ろうとしていた。
疲れた様子を見せながらも、どこか晴れ晴れとした表情を浮かべ、不満を露わにしている弟の右手をひきながら、右手だけで支え背負っている妹の方をちらりと見る。
彼女は、何とも満足げな顔をしていた。目を閉じ、口を半分開き、全体重を自分に預けながら、きっと夢の中では今日の続きを続けているのだろう。外で走り回り、遊び回った今日と言う日の幸せの続きを見ているのだろう。
ならば、邪魔はすまい。
それは、とても素晴らしい事だ。
「兄貴ー」
と。
不意に聞こえてきた弟の声に、ヨハンはミハエルの方に視線を向けた。
彼は、先ほど見た以上に不満げな表情を浮かべていた。
思わず、瞬く。
「……どうかしたのか?」
「俺もおんぶしてーんだけど。ネーナの事」
「……あぁ、成程」
そう言う事かと頷いて、それから首を振る。
弟の申し出は弟らしいものであり、微笑ましく思える物だったけれど、だからと言って受け入れられる物ではなかったのだ。
「駄目だ。とても疲れている今のお前に、ネーナを預ける事は出来ないな」
「大丈夫だって! 落とさねーから!」
「その心配はしていない。が、ネーナをおぶっている最中に、お前まで力尽きたらどうするんだ。私は一度に二人も運んだりできないぞ?」
「……そんなことにはなんねーもん」
「声が小さくなっているぞ、ミハエル」
「……」
最終的に沈黙を纏った弟は、せめてもの抵抗と言わんばかりに、ぎゅ、とこちらの左手を握りしめてきた。本当に、申し訳程度ではあったけれども。
少し苦笑して、ヨハンもミハエルの右手を握り返した。
ネーナが喋ってないけど……そこはすみませんです。
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