式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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本編じゃ大変なことになってますが……
でも、ここではできるだけ明るくいきたんです
控えめなノックの音がしたのでドアを開くと、そこにはアレルヤがいた。
「お、アレルヤか。どうかしたのか?」
「えっと……ロックオン、貴方は今日が誕生日……でした、よね?」
緊張の面持ちでそう、真剣に訊いてくるアレルヤ。
彼が何をしようとしているのか分かり、苦笑する。彼は分かりやすすぎるのだ。
だが何も気がつかなかったふりをし、いつもと同じように答える。
「ん?あぁ、そうだけど」
「あの、その……」
アレルヤはどう言おうか迷っている様子で、中に視線を泳がせている。
さぁ、どう切り出してくるだろうか。遠回しにくるか、単刀直入にくるか。
多分巧者だろうな、と思う。遠回しにできるほど、彼は器用ではないだろう。
「えと……その………おめでとう…ございます、誕生日」
「ありがとな」
やっぱりだった。
それにしても、どうしてここまで緊張するのだろうか。一言『おめでとう』と、それだけでいいのに。それだけなのに。
もしかしたら、他人を祝うという経験が、少ないのかもしれない。だから。
それでもいいと思う。これから経験していけばいいのだから。
「で、これ……昨日買ってきたんですけど」
「プレゼントまで用意してくれたのか?」
差し出された小さな紙袋に、少し驚く。
彼がトレミーに帰ってきたのは今日で、それまでは地上にいた。その間に買ってくれたのだろう。一生懸命考えてプレゼントを選ぶ彼の姿が目に浮かんだ。
「じゃあ、僕はこれで」
「ありがとなー」
遠ざかる背中を見送って、それからドアを閉める。
「さーて、何を買ってくれたんだろうな」
椅子に座り、紙袋を開く。
一番最初に目に入ったのは、小さなマフィンだった。手作り、に見える。
ケーキの代わりだろうか?
顔をほころばせながら、次のものを取り出す。
それは、鉄製のしおりだった。
ひんやりとした手触りが心地よい。銀色の表面にはきめ細かい模様が彫ってあり、裏には『happy birthday!』と、あった。少し、高価そうだ。
きっと、彼は自分の趣味が読書であることを覚えていたのだろう。それでこのプレゼントなのだ。
それにしても随分と質素なプレゼントだ。
「あいつらしいっていうか……」
こういうものにも性格が反映するのか。
などと思っていたら、一番下にカードを見つけた。
手に取ると、そこには『いつもおつかれさまです。いつも本当にありがとう』とあった。
あぁ、つまり彼はこれを言いたかったのか。
本当に、彼らしいプレゼントだった。
本当に、彼には幸せになって欲しいな……
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